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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第二十三話
202/277

7

地震は弱まったが、揺れはまだ続いている。

歩行に支障が出るほどではないので、上町の家々から人が出て来た。

ゴールドドラゴンに驚く人、巨大ミミズに驚く人、地震に怯える人。

テルラ達に見える範囲だけでも酷く混乱しているので、街全体がハチの巣を突いた様な有様になっているだろう。


「わたくし達は再びエルカ公爵邸に行きますわ。この街の勇者をそちらに寄越してくださいな。自警団や兵士は街の防衛、下町の人命救助を」


レイが門番に指示を与えていると、ゴールドドラゴンが山の方に顔を向けた。

金山から生えた数匹の巨大ミミズが南の方に向かい始めた。

太く長い胴体が山の木々を倒している。


「姿や色合いはミミズですが、動きはヘビですね。まぁ、普通のミミズをじっくり観察した事が無いので、あれが普通の動きなのかも知れませんが」


指の輪を覗いてミミズを見ているテルラの身体を触りまくるプリシゥア。

ドラゴンの唾液でシミが出来ているが、服が破けている部分は無い。


「ケガは無いっスか? ゴールドドラゴンは、なんでテルラを連れ去ったんですか?」


「僕は大丈夫ですが、山に連れて行かれた理由はサッパリ分かりませんでした。地面の裂け目を見せられて、それがどうしたのかと考えていると裂け目が広がって、アレが」


「って事は、やっぱりミミズが湧き出しそうだよって伝えたかったんだね。間に合わなかったけど」


未だにふたつのリュックを前後に抱えているカレンがそう言うと、街のあちこちから悲鳴が上がった。


「レインボー様! 街のあちこちからミミズが湧き出しているとの事です!」


一人の兵士が走って来て報告した。

再び地面の揺れが大きくなる。


「靴越しに伝わる、地面の感触。凄く嫌な予感」


カレンが呟くと、門前の一帯からも無数のミミズが生え出した。

女の二の腕くらいの太さで、元気にうねっている。


「ギャー、やっぱりこっちにも出たー!」


カレンが鳥肌を立てると、ゴールドドラゴンが思いっきりミミズを踏み潰した。

二度三度と足踏みする度に、緩く揺れている地面が一瞬だけ激震になる。

数匹ほど潰した後、地面に付けた自分の足跡に顔を近付ける。


「これは……砂金? いえ、金の粒、ですか?」


テルラもゴールドドラゴンと同じ場所を見る。

潰れたミミズには体液や内臓と言った生物的な物は一切無く、代わりに小石程度の金色の塊を何個か抱いていた。


「もしや――命令です、街に湧き出たミミズがどちらの方角に向かっているか調べなさい。巨大ミミズと同じなら、即刻報告に戻りなさい」


ひとつの可能性に気付いたレイは、早口で兵士に指示を出した。

そしてゴールドドラゴンに向き直る。


「ゴールドドラゴン様。もしや、あのミミズ達は金を身体に溜め込んでいるのですか? そして、それを持ち去ろうとしているのですか?」


満足そうに頷くゴールドドラゴン。


「それはとても良くない状況ですわ! 金を持ち去られては街の、国の損失になるので、全部倒さなければなりません! そして恐らく、ミミズの目的地は南のリビラーナ王国ですわ!」


「最初に魔物が発生した国、リビラーナ王国ですか? なぜです?」


テルラの疑問に首を横に振るレイ。


「リビラーナ王国は、魔物を使って戦争をしているとの予想されています。戦争に必要なのは軍資金。確固たる根拠は有りませんが、わたくしはそう考えました」


ミマルンは別の可能性を考えようとしたが、今はのんきに議論をしていられる状況ではないので、とにかく口を動かした。


「レイの考えがハズレでも、動きが統率されているのなら何らかの意思を感じます。即刻阻止すべきです」


「そうですわね。街のミミズは街の人に任せましょう。わたくし達は、街の勇者やハンターと共に巨大ミミズの討伐に向かいましょう」


さきほど指示を与えた兵士が速攻で戻って来たのを見て、レイはそう言った。


「ご報告します! 街に湧き出したミミズも、全て南に向かっている様です!」

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