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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第二十二話
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貴族らしいド派手な調度品がセンス良く配置されたエルカ邸の応接間に通されたレイとミマルンは、間もなく甲高い声を聴いた。


「レインボー様ったら、本当にハンターなんかやっていらっしゃるのね!」


これでもかと貴族である事を主張している高級なドレスを着た銀髪の女性が、銀の鎧にラベンダー色のロングスカート姿のレイを愉快そうに見詰めた。


「プリズムお姉さま。ご機嫌麗しゅう」


立ち上がり、淑女の礼を取るレイ。

敵意が無い事を表すために曲刀を手が届かないぎりぎりの位置に立て掛けているミマルンも、レイとほぼ同じ形の外交用の礼をする。


「お初にお目にかかります。グラシラド国第三王女、ミマルン・ペペ・グラシラドでございます」


「初めまして。プリズム・イオ・エルカですわ。ミマルン王女もハンターをなさっていますの?」


「情報収集の旅に必要なので、一時的に」


「そちらも深い事情がおありの様で。――この子は私の息子ですわ。さ、ロビン。ご挨拶を」


プリズムのスカートの影に居た小さい男の子が前に出て来て、銀色の頭をペコリと下げた。


「ロビン・イオ・エルカです。よろしくお願いします」


「お久しぶりです、ロビン様。大きくなって」


レイが笑顔を見たロビンは、小さな声でモゴモゴと何か喋った。

そして、ミマルンの褐色の肌を見て、怯える様に目を伏せた。


「まぁまぁ、失礼ですよ、ロビン。でも、ちゃんとご挨拶出来て偉いですよ。お部屋に戻りなさい」


「はい。じゃ、僕はこれで……」


再び頭を下げたロビンは、メイドに連れられて部屋を出て行った。


「お可愛い事。ロビン様はいくつになられましたの?」


「四歳ですわ。――で、レインボー様。突然の訪問、何事ですの?」


客に座る様に促してから自分も座るプリズム。


「早速ですが、本題に入りますわね。ポーカンカとの国境で怪しい動きが有るらしいとの情報が有ります。ポーカンカ側は魔物の侵入を恐れている様です。何かご存じありませんか?」


「魔物、ですか? だからハンターの格好での訪問と言う事ですか」


「はい。ハンターパーティのリーダーであるテルラティア・グリプト様は、そう言う事情で大聖堂からのお客ではないので、今は街で情報収集をなさっています」


頷いてから腰の剣を撫でるレイ。

護衛無しなので、この国の王女であるレイはそのまま帯剣している。


「ポーカンカとの国境と言えば、この街の東の端ですわよね。レインボー様もご存じでしょうが、金山の向こうなので、人里は有りません。しかし定期的に国境警備兵が回っていますので、何か有れば即刻報告が上がって来るはずです」


プリズムはいつの間にか室内で控えていた執事に視線を送った。

門前で出会ったあの初老の執事だった。

無言で首を横に振っている。


「現時点では何も無いと答えるしかありませんね。しかし国境に面するゴールドグラスを預かるエルカ家としては、ポーカンカ国の不安を無視出来ませんね。警備巡回の強化をお父様に進言いたしますわ」


「お願いしますわ。――確認ですが、魔物がこの街の周辺や鉱山を含む山々で目立った動きをしている、と言う話は無いんですね?」


「現在は観光客が激減しているとは言え、全くのゼロではありません。ゴールドグラスの西側は壁や塀がございませんので、観光客や子供達に被害が出ていれば他の街に伝わるほどの大騒ぎになっているはずです。しかし、私の耳には何も届いていません」


「分かりました。わたくしが聞きたい事はそれだけですわ。ハンターパーティのリーダー、テルラティア・グリプト様にそう伝え、今後の相談を致しますわ」

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