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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第十八話
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重くてかさばる防寒具一式を売り払って身軽になったテルラ一行は、道中出会う普通の魔物を退治しながら、カミナミアが有る南東を目指す。


「はー。暖かいって良いねぇ。野宿しても辛くないし。これが当たり前なんだけど」


野営の為のテントを張り終えたカレンが、一息吐けつつ言った。

太陽が地平線に沈むのは数時間先だが、地域的に夜はまだまだ気温が低いので、早めに準備をしている。


「寒い地域は明りに虫が寄って来ないのだけは良かったっスけどね」


焚火でスープを作っているプリシゥアが頷くと、剣の手入れをしているポンチョ姿のレイが心から嫌そうな顔をした。


「あー、そう言えば虫が居ませんでしたわね。道理で安眠出来た訳ですわ。安宿は言わずもがな、ハンター用のちょっと良い部屋でも、運が悪ければ部屋の中でも平気でクモやゲジゲジが歩いてますものね」


「旅ももう長いので虫は平気になったと自負していますが、僕もゲジゲジだけは無理ですね。無理です」


料理の手伝いをしているテルラが同意の微笑みを零す。

進む度に気温がわずかずつ上がって行く旅は、まるで明るい未来に向かって進んでいる様な高揚感が有った。

その翌日、中継地となる街に寄った。


「では、物資補給に必要な旅費稼ぎに簡単なクエストを受けましょう」


リーダーであるテルラの言葉に従い、一行は役所に行く。

掲示板には数枚のハンター向け依頼書が貼ってあったが、赤枠で塗られた特別目立つ張り紙に全員の視線が吸い寄せられた。


「『緊急、謎の乱心事件の原因究明求む』だって。結構良い報酬だよ」


カレンが標題を読み上げる。

詳細が細かい字で書いてあるが、そちらは長いので音読しない。


「乱心は心の問題だと思うんですが、そこをあえてハンターに頼むのは不自然ですね。人心を惑わす魔法を使う魔物でも居るんでしょうか」


テルラが詳細を黙読し始めると、レイもその横で読み始める。


「原因究明への取っ掛かりがひとつも無いと書かれてありますわね。魔物が原因かどうかも分からないので、ハンターにも依頼してみる、と。他の機関にも調査を依頼していると読めるので、簡単なクエストの可能性が有りますわ。勿論、逆も然りですけどね、テルラ」


「そうですね。戦闘が無くて実入りが良いこのクエストを受けましょうか。クエストの難易度は分かりませんが、教会に寄って不死の魔物の情報が入っているかどうかも確かめないといけませんし、緊急性が無いこの仕事が最適です」


「でも、テルラ。原因が分からなかったら無収入になるよ。ハープネット国で神様が暴れたって例を見たばっかりだから、人心を惑わす魔法となると、そっちの方向の心配も考えられるし。魔物以外だった時はどうするの?」


カレンが訊くと、テルラは少し考える。

張り紙を再度読み直し、キャンセルに関する記載が無い事を確認する。

この場合はキャンセルしても違約金は発生しない。


「そうですね――不死の魔物の情報が入っていれば急いでそちらに向かわなければなりませんから、通常のクエストでも時間が必要な物は完遂出来ないでしょう。その時はキャンセルで。入っていなければ、急ぐ旅でもありませんし、数日この街に留まってクエストにチャレンジしても良いと思います。それでどうでしょうか?」


反対が出なかったので、乱心事件のクエストを受ける事にした。

緊急のせいかその張り紙は剥がせなかったので、手ぶらでカウンターに行き、口頭でクエストを受けたいと伝えた。

キャンセルしてもお金を取られない事もしっかりと確認した。

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