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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第十七話
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宿の一室でストーブを囲んでいるテルラ一行は、今日の予定を相談した。

昨日一昨日は終日歌や観劇を楽しんだが、遊んでばかりでは旅費が持たない。

それに、吹雪を呼ぶ魔物を倒してから日数が経ったので、そろそろ復活するかも知れない。

なので、これからは出掛ける予定を入れない事にした。

外は快晴で積もった雪が解け始めているが、極寒である事に違いは無いので、宿に篭りっきりでも苦は無い。


「いよいよコレの出番だね。ずっとリュックに入れておいたんだけど、なんだかんだで遊ぶヒマが無かったんだよね。興味が有る人はテーブルに集合」


ストーブから離れても寒くならない様に薪を足したカレンが、未開封のトランプをテーブルに置いた。

新品だが、長旅の影響で使い古されているかの様にくたびれている。

娯楽を知る勉強で劇場や遊戯施設のパンフレットを読もうとしていたテルラがそれに目を向ける。


「僕は遊び方を知らないんですけど、カードの知識も将来の為になるなら覚えたいですね」


「本当にテルラはこういった世俗に疎いのですね。大丈夫、わたくしが教えて差し上げますわ。――で、何で遊びますの? ポーカー? ブラックジャック?」


興味津々な声色でレイもテーブルに着いたが、プリシゥアはストーブの近くから離れなかった。

それを気にしながらトランプの封を開けるカレン。


「絵柄とかを覚えるために、まずは簡単なババ抜きにしよう。プリシゥアも一緒にさ」


「私は良いっスよ。集中力が要る遊びは苦手っスから。集中したらしたでやめられなくなる性分っスし」


「そっか。――三人でババ抜きは駆け引きにならないから、数回で次にいこっか」


そうして遊んでいると、昼過ぎにドアがノックされた。


「どうぞ」


カードを伏せたテルラがドアを開けると、黒い衣装のコクリ・コツンとポツリ・ポツンが立っていた。

彼女達の武器である大鎌は廊下に立てて置かれている。


「例の魔物について、決まった事をお知らせに参りました」


「魔物……と呼ぶと言う事は、神として扱わない、と言う事でしょうか」


客の二人に席を進めるテルラ。

カレンはカードを片付け、プリシゥアは立ち上がってテルラの斜め後ろで控えた。


「はい。鍜治場を潰すのも、異常気象を放置するのも、議会は了承しませんでした。どちらを選んでも経済が滞って国が傾きますから。ですので、魔物として退治します」


「そうですか……」


「不死の魔物退治である可能性も残っていますので、レインボー姫とテルラ様方には、どうか参加をお願いします。このポツリを付けますので」


「えー、私、要らなくないですか? 私は攻撃魔法を使えませんし、動物の解体もやった事有りませんし」


先輩巫女に無言で睨まれて縮んで口を噤む後輩巫女。

ポツリは怠け癖が有るので、働かせようとするとすぐ愚痴る。

その性格を知っているテルラは、巫女達のやり取りを無視して首を横に振った。


「魔物なら退治しますが、相手が神の可能性が有る戦闘に参加するのは、ちょっと難しいですね」


寒い中街の外に行かなくて済むかも、とほくそ笑んでいるポツリを見ながら続けるテルラ。


「僕は他国の宗教者ですし、レイは他国の王女です。そんな僕達がこの国の神を退治したとなると、各方面に迷惑を掛ける事になりかねません。いつもはハンターだから身分は関係無いと言ってますが、今回はそんな言い訳は通じないでしょう」


「確かにおっしゃる通りですね……」


一瞬だけ俯いて考えたコクリは、即決して顔を上げた。


「無理強いは出来ませんね。リカチ王女に皆様の不参加を報告しますが、宜しいでしょうか」


「申し訳ありませんが、その方向で。一応、次の退治の経緯を教えてください。その内容によっては、その次の退治に参加させて頂くかも知れませんし、未解決でも帰る事になるかも知れません」


「了解しました」

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