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野を越え山を越えて進んだテルラパーティは、整備された登山道入り口に着いた。
テルラは興奮した面持ちで案内図が書かれた看板を見上げる。
「ここがシーキュー図書都市の入り口ですね」
「テルラが来たがっていたのはここっスか? 図書都市って言うくらいっスから本がいっぱい有ると思ったんスが、何にも無いただの山っスね」
馬車のままでも登れるおうとつの無い緩やかな山道を見上げるプリシゥア。
重要拠点に良く見られる金と手間の掛け方をされているが、図書館や本屋どころか、段々畑や民家さえない。
道以外は他の山よりも開発が進んでいないので、都市と呼ばれる物が有るとはとても思えない。
「見ただけでは分からないでしょうね。ここは山の地下に都市が有る事で有名な場所なのですわ。何でも、地下は気温と湿度が一定なので、紙の保存に適しているとか」
プリシゥアの横に立ったレイが同じ方向を見上げ、よその国の事なのに得意げに説明する。
「は? 地下っスか? それってつまり、洞窟に都市って言われるくらいの人数が住んでいるって事っスか?」
「洞窟ではないはずですわ。天然の洞窟や鍾乳洞では地下水が問題になるので、そう言った物を避けて一から掘ったと言う話ですわ。膨大な人手と時間を掛けているので、その特殊性が話題になって他の国にも存在が伝わっているんですわ」
案内図を見上げたままのテルラが頷く。
「この都市は東西南北に出入り口が有るとここに書かれていますので、中を通れば山越えせずに向こう側に行けます。ショートカットにもなるんですね」
「本には興味無いけど、ショートカットは興味有るよ。早く行こう」
登山の連続に飽き飽きしていたカレンが、溜息交じりにそう言った。
しかし、テルラにしては珍しくワガママな提案をした。
「折角世界的に有名な都市に寄れるんですから、休憩がてら数日滞在しませんか? 勿論、反対が有れば諦めますが」
テルラに反対する訳が無いレイと、立場的にリーダーに意見出来ないプリシゥアが、カレンを無言で見詰めて返事を待った。
「……クエストが有ったら受ける?」
「うーん、どうでしょう。特殊な街なので、街中には魔物は出ないと思います。出るとすれば外の山のどこかでしょうから、多分受けないと思います。さすがに休憩以上の日数をここで潰す訳には行きませんから」
「うんまぁ、それなら。休憩は大賛成だし」
カレンが頷いたので、一行は歩き易い山道に入った。




