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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第十二話
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2

三人の少年少女は、隊長宅前でぼんやりと座っていた。

青い空では鳥が飛び、毒のシャボン玉も一個だけ飛んでいる。


「退屈だからゲームでもしようか」


「良いな。何をする?」


カワモトが誰となしに呟くと、グレイが乗って来た。


「今風に言うならダーツゴルフって奴でな。前世のガキの頃、近所の悪友と良くやったもんだ」


カワモトは、言いながら靴を片方脱いだ。

その靴を地面に置く。


「本当は地面に穴を掘るんだけど、偉い人の家の前で掘ったら怒られそうだから靴にしとこう。――まず、参加者はコインをここに入れておく。で、遠くから順番にコインを投げ、コインを入れられたら総取りのゲーム。簡単だろ?」


「ほう。入らなかったコインはどうなる?」


「そのまま放置。最初のコインと同じで、全部入れた奴の物。本来の穴を掘るやり方だとワンバウンドノーカンなんだけど、今は靴だからワンバウンドもアリにしよう」


「ゲームが長引けば他人にチャンスが回るが、それだけ報酬が増える訳か。面白そうだな」


「遊びだから10クラゥ玉でやってみよう。これならカレンでも気軽に遊べるだろ。どうだ?」


乗り気じゃない顔していたカレンを見ながら言うカワモト。

人付き合いは嫌いじゃないカレンは、仕方なさそうに肩を竦めた。


「賭け事は趣味じゃないけど、それくらいなら良いか。ヒマだし」


「じゃ、やるぞ。最初はこれくらいで」


三人分のコインを入れた靴を、一メートルくらい離れた位置に置くカワモト。

そうしてから元の位置に戻り、刀の鞘で地面に横線を引く。


「この線から出たら、入っても無効だからな。――じゃ、俺から行くぞ」


カワモトは、ダーツを投げる要領でコインを放った。

しかし外れ。

次のグレイは上手投げ、カレンは下手投げで放ったが、一発で入る事は無かった。

何度か投げると要領を得て来て、靴に当たる様になって来た。

とうとうグレイのコインが入る。


「よっしゃ! 俺の勝ちだな! 総取りで良いんだよな?」


「やるな! 全部グレイのもんだ。次は俺が入れるからな」


「結構燃えるじゃん。私だって負けないもんね」


そうして遊んでいると、テルラ達が隊長宅から出て来た。

隊長格の騎士兵士達も出て来ているので、ゲームを中断して邪魔にならないところに移動する。


「作戦が決まりました。近くのカフェで説明します」


兵士の街なのでアルコール類がメインの無骨なカフェに入ったテルラ達は、人数分のソフトドリンクを注文してからテーブルに着いた。

そして始まるテルラの説明。

ランドビークの国境要塞は、他国の兵に占拠された時の対策で、ブロックごとに区分けがされている。

中を通って一直線に進む事が出来ないのだ。

隣のブロックに行くには、一旦国内側に出てから、隣の出入り口から入るしかない。


「そうだったのか。俺は鬼の相手で手いっぱいだったから、内部の構造までは知らなかった。――まてよ? あの泡は、要塞全体から漏れ出してるよな? なら、発生源は各ブロック全部に有るってのか?」


カワモトが首を傾げると、テルラは身振りを加えて続けた。


「分かりません。なので、初回は壁が壊れた角ブロックの突き当りまで進み、様子を見てから帰ります。問題が無ければ後日に再度行き、今度はそのまま次のブロックまで進み、可能なら最後まで進みます」


グレイが椅子の背凭れに身を預けて面倒臭そうな顔になった。


「なんでそんな手間を取るんだ。行くのは一緒なんだから一気に進めば良い。山のふもとに沿ってるんだから、外に出れば食料も手に入るだろうし」


「そうなんですが、エルカノートの人間が他国の軍事施設内を自由に動くのは問題が有るんです。今回は救援要請を受けているので特別に入れますが、普通は緊急事態でも入れないのが常識なんです」


「そんなもんかね」


「南と東、ふたつの国境線に沿って造られている要塞を調査するにはとても時間が掛かるので、かなりの人手が必要となります。ランドビークからの援軍を待たなければならないんです。それまでの時間稼ぎでもあります」


「なるほど。何もしないで待つよりは、常識を無視してでも多く情報を得ていよう、って事か」


「とは言え、エルカノートからの援軍も何もしないまま帰る訳には行きません。ですので、許可が得られれば、両国の国境沿いはエルカノートの軍が調査します。広すぎるので、手分けをしないといつまで経っても調査が終わりませんからね」


「その許可を得るにも時間が掛かる、と」


「教会ではなく、軍事用の魔法通信を使うので、一日有れば中央からの返事が届くでしょう」


「了解だ」


「南の砂漠側はランドビークの奥まで行くので、ランドビーク軍が担当します。僕達はこちらに同行します。王子が僕らを狙って来るかも知れませんので、ランドビーク軍が居た方が何かと都合が良いので」


言ってからカワモトを見るテルラ。


「カワモトさんはどちらに参加しますか?」


「テルラ達の方に行こう。良かったら、要塞内の調査の間だけパーティに入れて貰えないかな。女神からの連絡が有った時、一緒の方が都合が良いだろ?」


「あ、そうですね。要塞内の食費はランドビークが負担してくださりますので、僕は問題は無いと思います。みなさんはどう思いますか?」


いの一番に口を開くグレイ。


「報酬の分配はどうする?」


「ああ、報酬は要らない。俺の目的は魔物退治じゃないしな。邪魔するから退治しているだけで、俺はハンターじゃない。何より、ハンター資格を持ってないし」


「なら俺は良い」


他の仲間からは何の発言も無かったので、それを肯定とした。


「では、物資の補給をしましょう。初回は日帰りで太陽が出ている間に戻りますが、帰って来られない事態を考えて、保存食は念のために持てるだけ買いましょう」

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