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血脈を継ぐもの  作者: pico
1 時の魔女
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旅の夜 - イオンとウケイ -

幕間的な回になります。

セイエイに指示を与えて、ウケイはイオンの天幕へ入る。

中の音がもれないよう、術を張る。一行が長の邪魔をするはずもなく、影の一行に忍び寄れるものがいるとも思えないが、念のためである。

イオンが厳しい表情をして1人で座していたが、この兄は真面目な性格でたいていこんな顔をしているので、ウケイはとりたてて気にせず、どかりと座り込んだ。

「・・・セイエイはどうだ?」

ウケイは眉をあげた。

「見張りは免除して休ませた。仕上がりなら、もう教えることはないと報告しただろ。浄化術も精霊術も教えられることは全部教えた。本人も書庫の本を読み漁ってるから、歴史や過去の例なんかもほとんど吸収して、驚くほど使いこなす。贄としての準備も全部すんでる」

「適性は?」

「雷、風、・・水・・・」

ウケイは、そこまでいうと何かを思い出すように言葉を止め、あとはわからん、とつぶやいた。

イオンは内心の驚きを押し隠した。

影の一族は精霊適性の高い者が集められている。

その頂点にたつ、自らの血筋は王と同じくらい高い精霊適性を持つことは当然であったが、それでも適性が3つあげられたことに驚嘆した。さらには、ざっくばらんな性格のウケイが言葉を濁したことも異常だった。

影の一族の長はイオンだが、王都にいることが多いため、里についてはウケイに任せている。里の責任者であり、セイエイの教育の全てはウケイが監督した。教えることはないとまでいいながら適性を把握できていないというのも、わけがわからない。イオンは問いただした。

ウケイは、がしがしと頭をかきながら、話し出した。

適性のある属性の術を使うことができ、適性が高いほど大規模な現象を起こすことができる、つまり、どの属性の術がどのくらい使えるかを示すのが適性だろう?

セイが戦うときに使って見せるのは、だいたいが雷、風、まれに水。

攻撃に使うのは雷で、威力も高いので、第一適性だろう、と。

そこまで話すと、ウケイは一旦黙り込んだ。

「なあ、兄者。術が思い通り発動しないことって聞いたことあるか?」

「未熟な術だ」

即答したイオンに、ウケイは首を振った。

「セイエイは風の術を戦闘補助ぐらいにしか使わないんだ。攻撃に使うには、風は気まぐれでつかいづらいと」

イオンが口を開く前にウケイは否定した。

「制御が甘いわけじゃないはずだ、俺の適性が風だからいろいろ見せてしまったし、真似してみせろって言ったら寸分たがわず再現できるんだ。なのに、実践では魔物どころか周りもズタズタになった。はしゃいでやり過ぎたっていうんだ」

ウケイが思い出すようにしばし黙ってから続けた。

「・・・セイエイははしゃいでなんかなかった、むしろあいつは困ってた。水の適性もかなりありそうなんだが、優しいから攻撃させたくないって、防御の盾ぐらいしか使わない。属性に傾向?性格?なんか感じるなんで聞いたことあるか?」

質問の形を取りながら、ウケイは返事を聞かずに続けた。

「他の属性は使えないって本人は言うが、あいつの使えないと俺たちの考える使えないは違うんじゃないかと思えて仕方がない。あいつの術は、俺の使う術と違ってる気がしてならない。まるで精霊がいるような・・・あいつには何が見えてるんだろうな」

イオンは考えをまとめるようにしばらく黙り込んだが、またウケイに問うた。

「お前から見てセイエイはどうだ? 己が立場を納得していると思うか?」

「納得もなにも、あいつは自分が王家の御子のための存在だとみなしているよ。それ以外の生き方を知らないんだから」

ウケイはすぐにそう答えた。

”贄”が自らの立場を受け入れていることは、絆を結ぶために絶対に必要な条件だ。

であれば、セイエイの態度は当然そうあるべき姿のはずだが、ウケイの表情は明るくはなかった。

はたから見るとそう見える。

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