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血脈を継ぐもの  作者: pico
1 時の魔女
10/22

幕間 sideトゥリア

インターバル



驚いた。

目の前で膝をついてこちらを見上げる少年に、興味が湧き上がる。


影一族の、あの忌々しいイオンがこの森に踏み込んだのを察知したときは、本当に腹が立った。

名を耳にするだけでも腹立たしいのに、このわたしの森に入り込むなんて。

どうやって追い返そうかと様子を見に行かせて、ツキヒそっくりの少年を見た。

懐かしかった。

あの子の結婚のことで、喧嘩別れのようになってしまって、それっきりになってしまったのを残念に思っていた。その後に森の一件があって、影一族そのものとも疎遠になって、あの子との縁が途絶えてしまった。

だからもしかして、ツキヒからの伝言を運んでくれたのではないかと。そうでなくても、少しは様子を知ることができるんじゃないかと期待してしまった。

だから、わざと一人だけ呼び寄せた。

でも、違っていた。

あの子の結婚もそうだけど、母子を切り離すような、人を駒のように扱う影一族のやり方には、憤りを感じる。


だけど、それよりも今は、この子自身に興味がある。

あのリスに自力で気づくだなんて。

長とその弟という手練れの2人でさえ、全く気づいていなかったのに。

ツキヒに聞いていたからこそ、気付けたと思っていたのに。

黙ってこの子がこちらを見ている。

深い青の瞳や、凛とした佇まいがツキヒによく似ている。「時の方」らしくなんて振る舞う必要はないと思った。


「あなた、適性は何? ツキヒと同じ闇なの? それで気づいたの?」

遠慮して、遠くに跪いたままなのに焦れて、グイグイ近づき、覗き込むようにして問えば、セイエイは気圧されたように身を引きながら答える。

「・・・適性は、雷、です」

雷性は、ツキヒの闇ほど稀有ではないが、火水風土の4つに比べれば、あまり見ない属性だ。

「まあ! ちょと何かやってみせてよ。みたいわ!いいでしょ?」

セイエイが、ふっと小さく笑む。

硬い表情をしている間は冷たい人形のようだったのが、息吹を吹き込まれたように柔らかくなる。

蕾が花開く瞬間を見た時のように、心が躍った。

目を伏せて考え込んでいたセイエイが、何か思いついたらしく、瞳を煌めかせてこちらを見た。

「少し離れていただけますか?」

セイエイの口の端に楽しげな笑みが浮かんでいる。

それだけで、何か素敵なものだと期待が高まり、トゥリアは言われた通り数歩下がった。


セイエイが、水筒から水を撒いたと思ったら、突然つむじ風が巻き上がる。

すると、目の前で、虹色の光が踊るようにゆらめき、さらにその周りを飾るようにキラキラと光が舞い散る。

それは、とても幻想的な光景だった。

息を飲み、見惚れる。ほんの数秒のことだったが、心に残る美しさだった。

「・・とても、きれい」

思わずため息とともに言葉がこぼれた。

「時の方にお気に召していただけたなら、よかったです」

そう答えて、セイエイがはにかむように笑む。印象がぐっと幼くなり、彼がまだ少年なのだと気づかされる。


まだ少年に過ぎない彼が、今の光景を作り出したことに驚かされる。

強い雷性があれば、落雷を起こして見せていてもおかしくはなかった。

もちろん、トゥリアは落雷で木々が痛めつけられるのは嫌だったが、セイエイの楽しげな笑みはそんなことはしないと信じさせてくれた。

期待どおり、いや期待以上だ。

キラキラと舞った光が雷性の火花ならば、その繊細な操作にはかなりの力量が必要だろう。

そして突然おこったつむじ風に、踊るように散らばった水と、ゆらめくような光。

セイエイの適性は雷だけのはずがない。

風が操れなければ思い通りつむじ風は起こらない。それも火花同様の繊細な操作だ。

雷と風、複数の属性を思い通りに操った力量は感嘆に値する。

水と光は操ったわけではなさそうだったが、セイエイの周りで好意的な何かを感じた。

この子は、精霊適性の高い影一族の中でも、異色な存在だ。


そして何より・・・。

影で教えられるのは、戦闘向きの実用的な技術のはずなのに、見せてくれたのはただ綺麗なもの。

その場で考えついた発想も驚きだが、森を愛するトゥリアに応えようとしてくれたその気持ちが嬉しい。

「私はトゥリアよ。そう呼んで。・・・・友達になりましょ」

だから友達になりたいと思った。

ツキヒの息子だから優しくしてるのでも、話したいのでもない。

この、やさしい少年と友達になりたいと思った。

セイエイは驚いたようだ。そういえば、ツキヒもそうだった。

あの一族では、友達というものを考えもしないらしい。

友達の第一歩は何がいいかしら。

トゥリアは楽しい気持ちで思案する。

そう、何かプレゼントがいい。綺麗なものを見せてくれたお礼を。


セイエイが何を願い、それがどんな結果になるか、トゥリアは予想できなかった。





続きにちょっと苦戦していますので、ボツにしかけだった、トゥリアバージョンに手を入れてアップしました。

本編続きは少しお時間ください。

アサッテに飛んで行ったセイエイの回収に、周囲は呆然としており、動き出すのにもう少しかかりそうです。よろしくお願いします。

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