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メロンソーダの泡の味  作者: 井田音 いつも
7/19

名前

「私さ、本屋に来る人は寂しがり屋が多いと思うんだ」


彼女は僕と同世代には思えなかった。

僕自身が幼稚なのかもしれないが、しっかりと自分の意見を持っていて、少し尊敬というか憧れがあった。

そんな彼女がまぶしかった。


「かっこいいな」

「何、突然?そんなことないよ」

有紗はきっぱりと言った。


「私は不器用なんだ」

「そうは思わないけど」

「すごく不器用なんだよ!」

「そんなに主張しなくてもいいのに」

「あ、ご、ごめん」

「かわいいね」

「はっ??なに、なんだよ!!」

からかって、照れる有紗が面白い。


照れながら有紗がふと

「お前は、お前でいいからな!」

「お前って言うなよ」

「あ、…慊人」

「あはははは」

「なんだよ!笑うなよ!!」

「おま、慊人も私の名前行ってみろよ!」

「なんでだよ!嫌だよ!」

「そうか、嫌なのか」

急に笑っていた有紗が涙目になった。


「なぁっ!!あ、り…さ!」

「もう一回!」

「あ、有紗!」


「言えたじゃん!」


思い返すと、なんて恥ずかしいことをしたんだろうと赤面する。

名前を言い合うとか、青春かよ!って自分でツッコミを入れてしまう。


でも、きっと普通の人は、こういった青春っぽいことをしてきたんだぁ~と思うと貴重な体験が出来て、すごく嬉しかった。


何よりも有紗と話すだけで、そのままの飾らない自分を出すことが出来た。

自分を受け入れられてるようで、すごく嬉しかった。


「名前くらい言えるよ」

ちょっと照れながら僕は伝えた。

すると有紗は、ふと何かを思い出したかのように

「でもさ、何にせよ。最初が一番大事だと思うんだよね。ただの名前だけどさ、それすら呼んでくれない人もいるじゃん。恥ずかしいとか言って次に持ち越すとかさ…私はもったいないと思う。その時って”今”しかないのに次っていつ?みたいな。まぁ、結局は人の価値観とか性格の違いになっちゃうんだけどさ、って、一方的にごめん」


「いや、有紗ってすごいね。僕は、そんなこと考えたことなかったけど”今”を感じるとその瞬間瞬間って本当に大切なんだなぁって感じたよ。僕は、実は、その、大学を卒業するんだけど…友達いなくてさ。

いないというか、人付き合いが苦手で…だから、その有紗に出会えてよかったと思う」

「ありがとう。慊人は人付き合い苦手じゃないと思うよ。ただ苦手って思いこんじゃってるだけだと思う。だって私とも、こうやって話せてるし、私は嫌じゃない。」


「ありがとう」

有紗との時間は、自分を見つめられる時間だと思う。

いい人だとか、人付き合いが苦手だとか、ずっと今まで逃げていた。


自分が何気なく話す言葉で相手を傷つけたくないという気持ちと、自分の心を傷つけたくないから、ありふれた言葉しか言わないし、意見も言わずに流れてた。

どんな気持ちも押し殺して、いいよ。と言っていた自分を今、発見した。


「これからも色々話そうよ!私、慊人のこと、人として好きだよ!」

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