お願い
普通の人はどう思うだろうか。
いきなりお願いされて、それを受け入れてしまう僕を…
何かに勧誘されるとか、裏道に連れて行かれて、、、とか。
想像力が豊かな人なら、そう感じるだろうか。
「実はね!この近くの喫茶店のクリームソーダが飲みたいんだけど…一人じゃ入れなくて…お願い!一緒に来て欲しいの!」
「ははは、クリームソーダか…」
緊張は一瞬で消え去ってしまった。
少しの時間を要して
「あ、ごめん。いいよ。喫茶店行こうか」
口を少し開けて、ぽかんと立っている彼女が
「うん、ありがとう」
と返事をしてくれた時に、心が温かくなった気がした。
「ごめんなさい」
本屋を出て少し街路樹の葉の揺れを感じながら、彼女が小さな声を出した。
「なんで?」
「突然だったし、変でしょ?」
暇つぶしで本屋にいたことを伝えるのが恥ずかしく感じ
「突然だったけど、別に…今日は良い本に巡り合えたらいいなって思ってたし」
「…良い人に巡り合えたらいいね」
「?」
「私は良い人に巡り合えたよ!ずっと夢だった喫茶店でクリームソーダが飲める」
「僕がいい人?」
「うん。私の夢を叶えてくれた人。だから良い人。」
そう言う満面な笑みの彼女を見て、僕は何故か泣きそうになった。
なんて純粋なんだろう。
自分が良い人かはわからないけど、彼女にとっては僕は良い人で彼女の小さな夢を叶えてくれた人。
「だから、あなたにも現れるといいね」