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第2話 ステータスにある駄女神の失敗

本日投稿した3話中2話目です。

そっからさらに二年ぐらい経った時、俺はある発見をした。

この世界には、ステータス画面なるものがあるらしい。

魔人の人たちや魔獣らが白い長方形を顔の前に出しているのを時々見たのだ。

なので、今日はステータス画面の出し方について教えてもらうことにした。

俺のいる森の中にある孤児院には魔獣ばっかりで、人型なのは俺と院長含める魔人が二、三人程度。ちなみに院長はあの蛇みたいな女性である。


「セリ先生セリ先生!」


「なあに、どうしたのアレク君」


セリ先生というのは院長のことで、長い銀髪、赤い目が特徴の、色白でスレンダーな女性だ。ラミアのように下半身が蛇、というのはない、今は。というのも、魔人は体を変えることができるようで、俺もセリ先生のラミア姿は一度だけ見たことがある。

とても優しい女性で、服装が質素なのも彼女の魅力を際立てている。

なお、アレクというのはこの世界での俺の名前らしい。


「ステータス画面の出し方を教えてください!」


俺がそう言うと、セリ先生の顔が曇った。


「……アレク君にはまだ早いわ」


「でもサニアちゃん(あの喋る蛇、実はセリ先生の娘)とかイグサ君(喋る鷲)とかは出してるよ。どうしてお――僕じゃ早いの?」


うーん、子供っぽい言葉って難しい。つい俺とか言いそうになるし。


「うーん……」


セリ先生が腕組みをして考え込む。


「――現実は残酷なのよアレク君」


「いやいや考えた末の言葉がそれですかセリ先生」


あ、やべ、思わず子供っぽくない言葉が。


「本当に現実は残酷なのよ。でも……どうしても知りたい?」


「どうしても知りたいです」


そう訊かれたら当然じゃないですかー。


「そう。じゃあショックを受けちゃだめよ?」


「はい!……?」


「ステータス画面はね、『ステータス』って念じれば簡単に開くわよ。やってみて」


何だ、すっごい簡単じゃないか。

早速念じてみる。

すると目の前に白い長方形が現れた。


「おっ」


「書いてあるのが見えますか?」


「えーっと……」


そこには


名前::アレク(忌み子)

年齢::5歳

種属::人類

職業::支援者Lv1

    異世界人Lv1 

    技能生成者Lv1

技能::『忌み子』(U)

     〈能動〉

       なし

     〈受動〉

      技能暴走(スキルアウト)

      絶対黒髪(ブラックス)

    『支援者』

     〈能動〉

      能力上昇魔法初級(マイクロバフ) 

      能力下降魔法初級(マイクロデバフ)

      回復魔法初級(マイクロヒール)

     〈受動〉

      魔力上昇(微小) 

    『異世界人』(U)

     〈能動〉

       なし

     〈受動〉

      相互交流(インターアクト)

      体力上昇(中)

    『技能生成者』(U)

     〈能動〉

      技能生成(スキルメイク)

      技能改変(スキルオルター)

      技能消去(スキルデリート)

     〈受動〉

       なし


……なんだこりゃ。


「セリ先生、色々訊いていいですか?」


「……何でしょう」


気まずそうな声が。


「『忌み子』って、何ですか?」


セリ先生は躊躇いがちに口を開いた。


「……気付いてると思うけど、アレク君は私たち魔人とは違う、人類という種族なの。私たちよりも数が多い種族でね、長い間私たち魔獣・魔人と争いをしているの。結果は私たちの負けに近いけどね。その結果私たち魔獣が比較的安心して暮らせるのはここ、リオスルイド半島だけなの。

――話が逸れちゃったわね。人類には自分らと違うだけで迫害する習性があるみたいでね、例えば生まれた時から才能がある子とか生まれつき病気を持ってる子とかね。特に黒い髪の子は忌み子と呼ばれて、生まれてから散々虐待した挙句、魔獣から逃げる囮とかに使われるのよ。アレク君もその一人で、私に向かって投げられたのよ。それを拾って育てたわけ。体中の痣はその時から。

忌み子はステータスにも反映がされて、技能にあるでしょう?調べてみなさい。意識を集中すれば調べられるから」


俺は『技能暴走(スキルアウト)』に意識を向けた。すると


技能暴走(スキルアウト)

 所有者が技能を使用した時、所有者にダメージを与える。


……何だよ、これ。所有者にダメージ?

ついでに『絶対黒髪(ブラックス)』を見てみる。


絶対黒髪(ブラックス)

 所有者の髪の色は黒以外に染められない。


……ホント何なの。

黒い髪の人は忌み子。髪の色は黒以外にできない。

ダメじゃん。


「不条理ですね」


「ホントよね。髪の色で差別するなんて。でも安心して、ここなら逆に優遇されるわよ」


「それは助かります」


「ふふふ、精神の成長が早いと思ってたけど、問題なかったわね」


え?


「アレク君、時々子供っぽくないこと言うんだもん。驚いたわよ」


「アハハ……」


バレてた。恥ずかしい。


「それで、アレク君の職業は何かしら?」


「えっと、『支援者』です」


「まあ、『支援者』ですか。頑張って支えてくださいね」


「はい、もちろんです!――他にも色々訊いていいですか?」


「ええ、どうぞ」


「えっと、それじゃあ……職業の隣のLvって何ですか?」


どうせジョブレベルだろう、と思いながら訊く。


「それは職業練度と言って、最大20まで上がります。練度が上がると技能が増えるんですよ。始めは上げやすいんですけど、段々大変になってきますね」


ふむ、なるほど。


「職業っていくつぐらいあるものなんですか?」


「そうね……ほとんどの人が一つで、たまに二つ、極々稀に三つ持ってるらしくて、四つ以上はないみたいよ。人類の方は知らないけど、多分同じじゃないかしら」


ふむ、俺は特殊ってことになるのか。サードジョブまであるし。

てか『異世界人』の『相互交流』のおかげで会話できてるのね。文字は少ししかわからないけど。


相互交流(インターアクト)

 何語であろうと理解し、会話ができる。


それはさておき『技能生成者』って何だろう?


技能生成(スキルメイク)

 SPの限り技能を生成できる。

技能改変(スキルオルター)

 SPの限り技能を改変できる。ただし(U)のついていないものに限る。

技能消去(スキルデリート)

 技能を消去できる。ただし(U)のついていないものに限る。


凄そう。


「特別な職業ってあるんですか?」


「ええ、私たちなら『神獣』、『魔王』とかね。人類なら『英雄』とか『竜騎士』とか言ったかしら」


おお、何か凄そうなジョブだ。

てことは『技能生成者』も特別なのだろうか。


「技能に関係する職業ってあるんですか?技能を作るみたいな」


「聞いたことないわね」


やっぱ特別なのか。


「技能の〈受動〉、〈能動〉っていうのは?」


アクティブスキルとパッシブスキルかな?


「〈能動〉は自分の意志と魔力で発動を左右できるもので、〈受動〉は常に発動してる技能ね。〈能動〉は使うには専用の詠唱と陣が必要になるけど」


ふむふむ。陣――魔法陣か。楽しくなりそうだ。


「魔力とか体力とかがどれくらいあるのかわかりますか?」


「確か『解析(アナライズ)』技能があればある程度わかるみたいよ。私たち魔獣は感覚でわかるからあまり関係ないけどね」


ふーむ、それがないとやりづらいよな。


「一先ず、これで大丈夫です」


「そう?ところでアレク君も五歳になったし私から訊いておきたいんだけど」


「何ですか?」


セリ先生が俺に訊くなんて珍しいな。あ、いや今まで話せてなかったからか?

セリ先生の口から一瞬赤い舌が出て、すぐに引っ込んだ。癖なのかな?


「アレク君は将来どうしたい?」


「?どう、とは?」


質問の意味がわからない。


「アレク君が人類って言ったでしょ?このままリオスルイドに残るのか、人類の国に戻るのか」


「まさか、戻るわけないじゃないですか。セリ先生のためにも、魔獣の皆のためにも、拾って育ててもらったお礼として頑張りますよ」


「――本当?」


不安げにセリ先生が訊ねる。なんか可愛い。


「考える必要さえないですね」


俺は力強く断言した。

するとセリ先生が安心した表情をした。


「良かったわ。本当に良かった!アレク君と戦いたくはなかったもの」


その言葉に、俺は眉をひそめた。


「戦うって、何でですか?」


「人類に回るってことは敵同士ってことだもの。そんなの嫌よ」


そこまで想われていたなんて。


「嬉しいです。安心してください。産みの親より育ての親です。絶対に裏切ったりしませんから!」


だってこの世界の人類怖いもん!差別とか、考え方が生理的に受け付けないっていうか、ね。


「嘘をついてるとか考えないの?」


「セリ先生を信用してますから」


「ふ、ふふふ……」


セリ先生が手で口を押えて笑っている。目には一滴の涙が。


「先生は幸せです。まさか五歳の子にそう言われるなんて」


「てことで、授業とかってありますか?戦闘とか魔法とかの」


「ふふ、早速やる気満々ね。毎日やってるから戦闘ならやりましょう。でも魔法は大丈夫かしら。忌み子の効果が……」


「まあ、そっちは何か考えてみますよ」


「そう。頑張ってね。それじゃあ明日からね」


「はい!」


俺はセリ先生に礼をしてセリ先生から離れる。

するとすぐに白い蛇がこちらに寄ってきた。


『アレクアレクー』


俺がこの世界で最初に見た生物がこの蛇、サニアだ。本当に、話しかけられたときはビックリした。あの時よりも、かなり大きくなっている。


『ママと何話してたのー?』


サニアはセリ先生の娘である。


「ステータス画面の出し方を教えてもらってたんだ」


『えーあれ簡単だよー?ちょっと考えたらパッと出てくるんだよー』


「そう言われても、僕にはわからなかったよ」


この孤児院で俺が普通に話せるのはサニアだけだ。どういうわけか、サニアは周りから遠ざけられ俺も遠ざけられていたので、似た者同士で仲良くなったのだ。

ステータス画面の出し方も、最初サニアに訊いたのだが返答が意味不明だった。


『ねーねー、また何か遊ぼーよー』


「え!?またってまさか――」


『とりゃー!』


「うわー!」


サニアが俺の首に巻き付き、俺はバランスを崩して倒れる。その隙にサニアは腕やら脚やらにも巻き付いてくる。


『おりゃおりゃー』


「いたたたた、痛い痛いって!」


サニアとしてはじゃれてるだけかプロレスごっこのノリなのだろうが俺としては毎回命の危機である。

振りほどこうにも、サニアの方が力が強い。圧倒的に。


「ギブ!ギブ!いたたたた」


『アレクおもしろーい』


「だから痛いって!サニアまた力が強くなっただろ!?」


『ほれほれー』


「ちょ、何か骨が軋んでるから!マジで止めておねがいしゃす!」


『何だってー?わ!』


スルッとサニアがほどける。


『ホント仲良いなお前ら』


一羽の鷲がサニアを足で掴んでいた。


「あ、ありがとうイグサ君」


イグサはこの世界では俺より3歳年上で同じくこの孤児院に暮らしている。両親はいないようで、よく下の子の世話をしている。

なお、俺がイグサと会話するのは毎回サニアに捕まってる時だけである。


『イグサー、何すんだよー』


『遊びで骨折るやつがいるか!サニアはもっと手加減してやれよ!』


『手加減ー?何それー?』


『ああ?えっとな、本気全力じゃなくて少しだけで接してやるっていうか、なんつーの、その――』


「力を弱めて相手する」


『そう、それだ!』


『力を弱めるー?』


サニアがわかったか物凄く怪しかった。

新出キャラ説明


アレク

主人公。人間。■■■ ■が忌み子として転生した。身体中に忌み子として虐待された消えない痕がある。その時精巣を切り落とされている。


セリ

蛇魔族。魔王ガルガンドに仕える魔人の一人。腕の皮膚には鱗のような模様があり、舌は蛇の舌である。魔獣形態は巨大な白い蛇で、人間たちからは『白姫』と呼ばれるほど恐れられている存在だが、本人は武器(薙刀)が振るえないとしてあまり使わない。責任感が強く、魔獣の誰からも頼られる『母親』だが、他の魔人の中には嫌っている者もいる。不安になると舌を出す癖があるが本人は気付いていない。実は園芸趣味があるが、それを知っているのは魔王ガルガンドのみである。


サニア

蛇魔族。セリの娘だが自分の父親のことは全く知らない。今は単純な性格で、言葉には擬音語擬態語が多く、間延びした口調である。実は友達がほとんどいない。


イグサ

鷲魔族。世話見のよいお兄さん気質だが少々頭が残念なのが欠点。村の警備や敵の偵察を担当する。実は自分は影が薄いのではないかと悩んでいる。


新出技能説明


技能暴走

所有者が技能を使用した時、所有者にダメージを与える。


絶対黒髪

所有者の髪の色は黒以外に染められない。


能力上昇魔法初級

対象一体の能力を1分間1%上昇させる。


能力下降魔法初級

対象一体の能力を1分間1%減少させる。


回復魔法初級

対象一体の体力を10回復させる。


魔力上昇(微小)

魔力がほんのちょっと(1%)上がる。


相互交流

何語であろうと理解し、会話ができる。


体力上昇(中)

体力が少し(5%)上がる。


技能生成

SPの限り技能を生成できる。ただし技能数は練度によって解放され、また作成した技能のSPの半分の合計は所有者のSPを超えることはできない。またオリジナルの技能なら半分ではなく2割となる。


技能改変

SPの限り技能を改変できる。ただし(U)のついていないものに限る。ただし一度改変した技能は72時間変更することができない。


技能消去

技能を消去できる。ただし(U)のついていないものに限る。


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