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時間がないのでもともと1話がみじかいのにさらに短い。
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考えていてもわからないことはわからない。とにかく沙耶に訊いてみるしかない。
「ひさしぶり、沙耶!」
「ああ、久しぶり、香織。」
「あのさ、訊きたいことがあるんだけどさ、」
「…?勉強のこと?」
そう思われてもしょうがない、っていうか勉強のことで聞きたいこともあるけど、今私が訊こうとしてるのは違う。
「そうじゃなくて、私が訊きたいのはさ、沙耶ってさ、椿泉に受かったんだよね?」
椿泉の名前が出た途端、沙耶の顔がこわばった。やっぱり椿泉でなにかあったんだ。
「なのになんで沙耶は綿中にい」
「言いたくない!」
沙耶が立ち上がり、すごい怖い顔で私を睨んだ。
「黙れ。二度とその話をするな。」
「あの、沙耶…」
「気分が悪くなった。悪いけど先生に次の授業の間は保健室にいると伝えておいて。」
沙耶はそのままドアを開けて教室を出て行ってしまった。
「このアホ!」
「うぇっ!?」
樹音に丸めた教科書で頭をスパンと殴られた。
「いったいよ樹音…。なんで殴るの~?」
「なぁぐるのぉ~?じゃないよ!香織が頭悪いのは知ってたけどここまでとは…」
「ちょっと待ってよ、私、『なぁぐるのぉ~?』なんてキモい言い方してないよ!」
「抗議するポイントそこかい…そりゃあんなこと言うわ…」
樹音が頭を抱える。
「あんたさ、なんで沙耶が綿中に来たのかわかんないの!?」
「それがわかんないから訊いたんだよ!」
「ああ!もう!なんでわかんないかな!いい、よく考えてみて、常識的にうちと椿泉、どっちも行けるならどっちに行くよ?」
「椿泉じゃない?」
まあ、私はついていける自信ないから行かないと思うけど。
「よし、そこまではいいね?で、沙耶はその椿泉に受かったわけでしょ?」
「うん」
「なのになぜかうちに転入してきた」
「うん」
「理由は2つ考えられる。1、勉強についていけなかった。これはありえない。沙耶は常に模試で全国100位以内に入ってたから。沙耶は努力家だから、中学入ってから成績落ちたとか考えにくいし。」
「じゃあ、もういっこの理由は?」
「だーかーら!それがなんなのか香織にはわかんない…んだよなあ、あのさ、中学生で、転校するようなことっていえばさあ、」
「私はいじめられてなんかない」
教室の入り口には、沙耶がさっき私をにらんだ時以上に怖い顔をして立っていた。