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ちょっと遅くなったけど頑張ってほぼ1週間後に上げたよ。すごい(自画自賛)やっぱり小説書くって、大変ですね…
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沙耶は私達と同じ綿沢小学校に通っていて、私と樹音の一番の仲良しの親友だった。
同じ幼稚園から綿沢小に行ったのは私と沙耶だけで、家も近かったので小学校に入学してからはずっと一緒にいた。そしてそこに3年生になってからのクラス替えで同じクラスになった樹音が加わり、私たちは3人組の仲良しグループになった。
頭がよくて本をたくさん読む沙耶の話は面白くて、器用な樹音の描く絵はとてもきれいで、3人でいる時間はとても充実していた。
頭のいい沙耶は3年生の2月から中学受験のために塾に行くようになって、遊ぶ時間は減ってしまった。それでも私たちは仲良くしていたし、沙耶もできるだけ時間を作って遊んでくれた。
しかし、6年生になるとさすがにそれは難しくなり、私たちが3人一緒にいるのは学校とその登下校の間だけになってしまい、だんだん樹音と2人で遊ぶことも増えていった。
仲間外れにしようとしてるわけではなかったが、そのことが後ろめたくて、中学入学を機に私たちはあまり連絡を取らなくなった。
だからこそ私はずっと沙耶に会いたくて、でもなかなか会えずにいたのだから会えたのはうれしかったけど、私にはそれ以上にわからないことがあった。
沙耶は中学受験に見事成功し、全国屈指の超難関進学校である私立椿泉学園に通っていた。
そこは沙耶の第一志望校だったし、実際入学するのを合格してからずっと楽しみにしていた。
だからこそ、沙耶が私達の通う綿沢中にいるなんてありえない。
―なんで、沙耶はここにいるんだろう。
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「沙耶!」
思わず興奮して立ち上がってしまう。
「佐川…座れ、静かにしろ」
呆れたように小野先生が言った。
「長岡、何か自己紹介しろ」
「自己紹介、ですか…?」
沙耶は数秒の間考え込んで、
「特にありません。よろしくお願いします。」
いや、流石にそれでよろしくお願いしろは無茶が過ぎると思う。
ていうか、今日の沙耶はおかしい。私の知っている沙耶は、もっと明るくて、話好きで、こういう時は何でも話していた。転入初日だから、クールを気取っているのかな。
「小野先生、私の席はどこですか?」
「お、おお…真ん中の列の後ろから2番目だ。」
うわあすごい無難なチョイス。沙耶はまっすぐその席に向かって歩き、すとんと腰を下ろした。
「じゃあ、HR始めるぞー、みんな長岡のこと気になるとは思うけど…話を…聞く気、ない、なお前ら…」
クラス全員が沙耶の方をちらちら見ていた。
まあ気になるよね。だって沙耶はスタイル抜群で頭脳明晰な美少女なのだ。その上、頭のいい人にありがちな私たちを見下してる雰囲気がまったくないから、親しみやすくて、小学校の頃は人気者だった。
今日はなんだか落ち着きすぎていてちょっと近寄りにくいけど、沙耶のかわいさはそれを補ってなおあまりあるくらいだ。
「ったく…しゃーねーな。じゃ、今日のHRやるよ。長岡、前出てこい。なんか質問ある奴!」
はいはい、とクラス一のお調子者、和親が手を挙げる。
「あの、彼氏とか、いますかあ!?」
なんだよそれ、とクラスがどっと沸く。しかしすぐに視線は沙耶の方を向いた。沙耶はかわいいから、結構みんな気になってるみたいだ。
「いえ、いません。特にそういうの、興味ないんで。」
しかしそのクラスの興味の高さに反比例するように、沙耶は冷めた声で言った。
「あっ、えっと…じゃあ、休みの日は?」
そこそこ無難な質問を投げたのは清人。クラスの立場並の質問内容だ。
「塾の授業とか、講習とか。あとは…特にないです」
やっぱり変だ。沙耶はこういう時結構ボケる。なのに、今はすごく真面目で、面白くない。いくらクールを気取るっていったって、そもそもこの綿中生の4分の1位は綿小出身だし、綿小では沙耶は学校一の秀才だったしかわいかったから、相当な有名人だった。だからみんなあの明るい沙耶のことは知っているし、そんな綿中でそんなことしても意味がないのは頭のいい沙耶なら少し考えればわかるはず。
「好きな俳優は?」
「好きなのは…」
「誕生日は?」
「誕生日は…」
その後は無難な質問が続き、沙耶が無難でつまらない答えをしているうちにチャイムが鳴り、数学の授業が始まった。
授業が始まり、先生が沙耶の実力を知ろうとしたテストで先生の期待以上の答えをする沙耶にみんなが驚いている間も、私は授業そっちのけで、沙耶が変な理由を考えていた。