表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議の季節  作者: めらめら
8/23

地獄のサバイバー

地獄で働いてたんだが、もう限界かもしれん。

「ぐお~待ってくれ~~!」

 人魂のライトを灯した地獄列車のドアが、俺の鼻先で無情に閉じた。

 軋んだ音を上げて劫火を纏いながら出発する列車を呆然と見送る俺。

 獄宿三丁目の安酒場で骨酒を呷りすぎて、気がつけばこんな時間だった。


「だめだ! こんな時間に、ここにいたら……!」

 駅から締めだされた俺は、ビクビクしながら人気の無い暗い路地を見渡す。

 16年前に地上で起こった『あれ』以来、地獄はすっかり様変わりしてしまった。

 60億の人間達が一挙にここに押し寄せて(天国に行ける奴など誰もいなかったのだ)地獄を占拠して、自分達のいいように作り変えてしまったのだ。

 そんなわけで俺ら鬼どもは今ではすっかりマイノリティ。職にもあぶれて、凶暴な亡者どもの顔色を窺う毎日。酒でも飲まなきゃやってられない。


 ……ふと、俺は道端に佇む影に気付いた。

 女だった。長い髪、黒い外套、白い肌、真っ赤な唇。


 女が、ゆらりと俺に寄って来て、ニタリと笑って……

「お願い……食べさせて!」

 そう言うなり、

「ステーキィ! ハンバーグゥ! 牛丼肉増しぃいいいい!」

 懐からナイフを取り出しながら、俺に噛みついてきた!


 まずい! 餓鬼だ! 俺は悲鳴をあげる。


 こないだも相棒が馬刺しにされて食われたばかりなのだ。


 泣く子も黙る牛頭大王の俺が何でこんな目に……!


「もう地獄はいやだー!」

 両手にナイフとフォークを握って襲ってくる女から、俺は泣きながら逃げ出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ