小さな冒険者
なんてことはなく
手から,体の中にあるものを出そうとすると,もやもやと何かが出ているような感覚がする。
最初は優しく,そして強くいろいろな出し方ができるようだ。
「おお,何かでてる・・・」
「マァクラすごいね,もう魔力をだす感覚を掴んだんだ・・・・あたしなんか1年はかかったのにぃ」
どうやらうちはなかなか凄いらしい
「どうやらコツを掴めたようじゃな,ではこの魔力玉をさわって見てくれんかの,魔力の適正を見ることが出来る魔道具なんじゃ,ハイテクじゃぞ」
「うん」
何やら透明の球体に触ると自分の魔力適応した色に光るらしい,おもむろに掌を着けてみる
「冷たい」
「光らんのう,魔力の圧は感じるし,・・・話からすれば火に適応が高そうだったのじゃが体が丈夫なだけなのかもしれんの」
「えー嘘でしょ!本当だ光ってない!ねぇねぇマァクラ人差し指を上に向けてピンと立ててみて!それからあたしが呪文唱えるから真似してみてよ!」
良くわからないが,どうやら適正が無いようだ,慌てた様子でアダーラがうちに指示を出す。
とりあえずやってみよう
「うん,わかった」
「よし,じゃあファラの呪文いくよ!
赤星よ力の末端をここに宿せ!火の恵みを!」
「赤星の力のまったんをココに宿せ,火の恵みを」
アダーラに続けて呪文を唱える
「ファラ!」「ふぁら」
ぽっとアダーラの手には火が灯るが,うちの指先にはぷしっと音が
なっただけで何も出てこない,何度かやってみるが結果はそのままだ
「失敗かのう・・・」
「どうやら適正が無いようだな,使えんやつめ!」
「ちょっと!」
まるで意味が分からない
王はちょっと申し訳なさそうにしている
さっきの偉そうな奴に酷い謂れをされているようだ
ムリフェインがそいつを睨みつけている
アダーラは目が怖い
「な,なんだね!その眼は!本当のことを言ったまでではないか!」
「きみぃちょっといい加減にしたまえよ,いくら儂でもいい加減堪忍袋の緒が持たんぞ・・・上に立つものは立つものらしく言葉と態度を選ばんかい,優秀だった父親が天で泣いておるぞ」
やはり王は良いやつだ,隣でおろおろしている姫様もいいやつなんだろう
「ところで話は変わるがあのドラゴンは何か変わったアクションをしていたかの?なんでも良いぞ」
「ドラゴンの普通を知らないでも,見つけたって言ってた」
「見つけたか・・・・わからん見当もつかんのぉすまんのう」
「別にいい,なんで王が誤るの?」
「まぁそうなんじゃがな,してマァクラはどうしたいかの,魔法は使えないくとも王級のブレスを受けて無傷のタフネス,剣を磨けば騎士はおろか冒険者にもなれるじゃろう」
騎士かアダーラと一緒は悪くない,とても楽しそうだきっと皆も歓迎してくれるだろう
だけど,うちはこの世界を知らない,ここに来るまでもとても楽しかった,そうだな・・・・
「冒険者がいい,うちはこの世界が知りたい・・・・」
少し回りが静かになるが,王が口を開く
「そうかそうか,あい分かったではこの後すぐにでも冒険者ギルドに行ってギルドカードを作ってくるといい,なんと頭がいい儂はこの展開を予想していてギルドへの手紙と選別を用意しておる,どうじゃ儂凄いじゃろ!」
「あーすごいっすすごいっす,なんでマァクラに選別を渡してやってください」
王の言葉を軽く流すようにムルジムが王を急がせる
王・・・そのうち肩たたいてやるからな
「そうせかすな,あれを頼むぞ」
頼まれた兵が奥から畳まれた布と小さな袋,長さ30㎝位の剣を持ってきて,上擦った声で話しかけてくる
「ど,どうぞ」
うちは小さな声で礼を言い,暫し受け取ったものを見つめる。
「アダーラ・・・・着けて」
「ま,まぁっかせて!」
さっきまで怖い顔をしていたアダーラが嬉々とした表情で駆け寄り,うちの体にいそいそと装備を着けだす
「ハハハうん,馬子にも衣装とはこのことだな」
「まぁいずれに会う時が来るだろう」
ムルジムとウェズンがどこか嬉しそうに言う
「よし今日はこれでお開きとしようか,その小袋には金貨が少々入っているしばらくは何とかなるじゃろう」
小声で王に礼を伝え,姫のほっぺに唇を軽く触れさせる姫は耳まで真っ赤になる
期待に満ちた目で王がうちを見ているが踵を返し伝える
「おじさんはちょっと嫌かな・・・」
あの人のいい王が顔をゆがめる様子が目に浮かぶうちたちは王の間から外に出る
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アダーラにギルドの前まで送ってもらう
「でも,まぁここまで来る途中の話でもその道を選ぶんだろうなって思ってたから驚きはしないけど,やっぱりさみしいね・・・」
「アダーラには感謝してる」
「そっか,役に立ててたらうれしいな,そうだ!これあげる!」
アダーラは腕に着けている小さな宝石のようなものがいくつか付いている細い金属でできているアクセサリーを取外し,うちの腕に取付ける
「これは隕石からとれたちょっと魔力が籠っている水晶のような石を使って作ってあってね,星屑の腕輪って言うんだ,綺麗でしょ?迷信だけど魔除けのお守りとして持ってるんだ,これをおねぇちゃんだと思って大切にしてね!いつでも王城に来ていいからね!」
アダーラはうちに甘いな甘々だ,でも胸が熱くなる
「泊る所だけは絶対教えてもらわないとだめだからね」
「ありがと・・・おねぇちゃん・・・・またね?」
礼を伝えギルドの中に入る,アダーラが往来の中何かわめきたてているが無視だ
いつか土産話をしてやろう
カランコロンカロンコロン
扉を開くと控えめな音で金がなる。
いくつかのテーブルと椅子,話をしている人たち,紙が貼ってある板を眺めている人そしてカウンターに同じ服を着た女性が何人か並んで装備を纏った人たちを相手に何か話しているようだ
おそらくあそこが受付だろう,一番若そうな子一人だけあいているようなのでそちらへ向かう
「こ,こんにちは・・・」
やはり知らない人と話すのは緊張する声が小さくなってしまった。
一応は気づいてもらえたようだ
「こんにちは!初見様ですかね?初めまして私はエマと申します。ここダイケン王国冒険者ギルドで受付嬢をやっています。よろしくお願いしますね!ご用件はなんでしょう?ご依頼ですか?」
元気いっぱいだ笑顔が明るい,おかげで回りに注目されてしまった。
隣の受付さんもちらちらこちらをうかがっている。
「ええと,その,あの登録に・・・・」
「ご依頼の登録ですね?内容はどういったものでしょうか?」
「えとお姉さん勘違い?してる,依頼じゃなくて冒険者になりに来た」
お姉さんの笑顔が固まる。
隣の受付さんも
クスクスと笑い声も聞こえる
「し,正気ですか?拾い喰いでもされましたか?」
若干声が震えている
「失礼な,王もうちなら大丈夫だって言ってた,あと手紙ももらってきた」
うちは手紙をお姉さんの前に置き反応を待つ
恐る恐るお姉さんは手紙を受取蝋付けしてある部分を見て口を開ける,栗みたいだ
「ちょっと待ってくださいね!マスター!」
お姉さんは大声を上げて奥へ引っ込んでしまった。
待ちぼうけである
その時湿り気のある手でポンと肩を叩かれ顔を近づけられ声を掛けられる
「お嬢ちゃん冗談はいけねぇな,冒険者っていうのは甘い世界じゃないんだ,嬢ちゃんみたいないいところで育ったような奴はすぐ死んじまうんだぜぇ,まっどうしてもって言うんなら,綺麗な顔してるし将来も楽しみだBランク試験直前の俺様アンズラ様が仲間に入れてやってもいいぜぇ,慰み者としてだけどなぁ!」
「やめてやれよ嬢ちゃんブルってんじゃんか」
ひゃはははと回りで笑い声も聞こえる
アダーラ達とは違う,暖かくない,何より,不快だ
『ドクンッ』と体の奥から鳴ったキガスル・・・
「どうした?ショック死でもしたか!」
『やぁ』
「・・・・・うるさい殺すぞ」
「なんだてめぇ!喧嘩売ってるのか!?」
「臭いし視界に入るだけで不快だ即刻に我の前から消え失せよ!」
「上等だ!ぼこぼこにして犯って姦して奴隷市場にうっぱらってやる!」
アンズラとかいう奴が掴みかかってくる
遅い,まるで止まっているようだ
カウンターには受付嬢のものとみられるハンカチが置いてある
それを取り手を保護する,そのまま奴の親指を握り捻ってそのまま組み伏せる
「汚らわしい手で我に触れるな!」
「てめぇ!」
アンズラとか言う奴の仲間であろう者たちに取り囲まれる。
バタバタとあわただしい足音がする。
「ふむ,殺すか」
「ちょっとちょっと何が殺すかですか!待ちなさい!」
受付嬢が戻ったようだし,もういいか,慌てて一味はアンズラを起こし去っていく
「っち覚えてろ!」
「誰?」
「誰ってエマですけど・・・・あれ雰囲気変わられました?」
「いやエマじゃn「あ手紙マスターに読んでもらいましたよ!」・・・そう」
「記憶喪失なんですってね大変そうですね!いろいろと常識を教えてやってほしいと書いてあったそうです。ところで王様たちと知り合いってすごいですね!シーリウスさまはイケメンでしたか?」
アダーラに似ているのか?何だろう
「うるさい・・・・」
「ちょっと口悪くないですか!かわいいのにもったいない!」
「っち!」
「舌打ちした!かわいい顔して舌打ちしましたよこの子!っとまあいいです。話を戻しましょう。とりあえずギルドについてから話しましょうか?」
「ギルドはアダーラに少し聞いた,他のこと,そう,お金とか教えてほしい」
「じゃあ通貨からにしましょう。この国と言いますか世界ではエンというお金を使ってます。昔は国によって違ったみたいですけど,1エン硬貨,10エン硬貨,100エン硬貨,1000エン硬貨,10000エン硬貨と五種類の硬貨があってその組み合わせでいろんな取引をできるんですよ!」
「うん,わかった」
「本当ですか?結構大事ですよ!お金!」
鬱陶しい・・・・
「・・・・・・・」
「無視ですかそうですか,べーっだ,じゃあ他に何かありますか?」
最初の丁寧さがなくなった
別にそっちのほうが緊張しないでいいけど
「アダーラが宿だけは女の人に聞いておけって」
「アダーラさんが?じゃあそうね・・・おすすめは川の前ってところなんだけど,説明が面倒くさいし,登録が終わったら連れてったげる!」
「いいの?」
「いいよいいよ今日はどうせそろそろ仕事引き上げる予定だったし」
「いやそうじゃなくて,登録・・・・」
「あそっちね,手紙に類まれなる才能の持ち主だからちっこいけど登録してやってくれって書いてあったみたいよ?王様からのお願いだからマスターもOKすぐに出してましたよ?」
「そうなんだ,魔法使えないよ?」
「そうなんだ,でも剣持ってるし剣士なんでしょ?ならいいじゃない,ところで字書ける?」
「・・・・書いて」
「おう上目使いはやめてくれ食べたくなる」
「食べる?」
「おっと忘れてくれ,じゃあ質問するから答えてってね」
「うん」
「初めに名前は?」
マァクラ
「歳は?」
とし?えーっと
「記憶喪失だからわかんないよね,ん~14歳くらいかなそうしよう」
14歳
「得意武器は剣でっと性別は女性」
もう勝手に進んでる・・・・
「じゃあ最後に水晶の上に書いた紙とカードを置いて,ちょっと痛いの大丈夫?冒険者になすくらいだし大丈夫ね,ぷすっとこの針指にさしてこの上に垂らしてね」
早口と早業でぷすっと針を刺され血液を徴収される。
おお今度は水晶が光ってるな
「まぶしい・・・・」
「ハイ,これで完成!ちょっと確認してみて」
マァクラ
職業:剣士
年齢:14
性別:女性
称号:∀kjし者
体力値:er-1000034000001
魔力値:er14856461256
適応属性:無
スキル:er母O;/?の力
あ・・・・
「文字が読めない」
「字も読めないのね・・・・ちょっと貸してみなさ・・・・ごめんなさい私もこれは読めないわ」
「エマ君新人君の登録は終わったかな?ちょっと奥まで来てほしいんだ・・・けど?」
「ま,ますたーこれ!」
「ちょっとなんといっていいのかわからないけど・・・初めて見る症状だね・・・」
マスターなる人が真剣な表情をしている・・・・
「うち悪い事でもしてた?」
「いや大丈夫だよ,ちょっとビックリしたけどね」
「うち強い?」
「え?いやうんまぁ普通じゃないかな?ふつう?じゃぁエマ君ちょっと用事あるから出てくるね」
この人,奥に来てほしいって言ってなかったかな,まあいいか
「と,とりあえず登録も終わったし宿に案内してあげるねマァクラちゃん!」
「ん?わかったお願い声上擦ってるよ大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!今から着替えてくるからちょっと待っててね!」
ばたばたとあわただしく裏へ駆け込むエマ
「お待たせ!」
早い!(確信)
「いやまってない,本当に待ってない」
「そう?じゃあ行こうか!」
二人で路地を歩く
何なんだろうこの子,最初はただのかわいい子供だと思ったのに,手紙をもらってから奥に行く前と騒ぎを起こしていたとき,そして今全然雰囲気が違う,最初は緊張してたからとかで納得できるけど,とりあえず何もない事を祈らないと・・・・
それにそんな事よりも・・・・
「かわいい・・・・」
「何?」
「いやなんでもないよ,なんでもないうん!」
さらっさらの髪に少し華奢な肢体
「そう?アダーラと同じ目をしてるちょっと離れて・・・」
隙だらけのくせに鋭いな
しかしこんなにかわいい子見たことないぞ,姫様も確かに愛らしい方ではあるがここまでではない,物語の出てくる何かではないのか
ちょっと目を離した隙に攫われそうだ
「何おまえさっきの…!」
さっきの冒険者にも狙われそうだし,しっかり見てあげなきゃね
どうもふわふわしていて危なっかしい
・・・・・ってもう路地裏に連れていかれてらっしゃる!
すでに特徴的なマァクラの髪は四つ先の十字路を曲がっている
「すぐに衛兵を呼んで!」
大声で周囲に叫ぶ
「どうした!」
「子供が攫われたの,すぐに追いかけないと!」
すぐ近くにいたのか,衛兵反応してくれた
私は要点だけを伝え衛兵の手を引きマァクラが連れていかれたであろう路地裏に近づこうとする
ズンッ!
「何この圧力・・・・」
・いったい何がッ
「は言・・・・たか?即・・・・界よ・・・・・・・場では見逃してやっ・・・・・・・・・ぞ早・・・・ね!」
圧力がより一層濃くなる
その場に行く前にプレッシャーに押しつぶされそうになり衛兵に支えられる。
「・・・赤よ!」
路地裏が明るくなった気がする
私までも潰そうとした圧力が霧散している
いったいなんだったのだ,
コツコツコツと足音が聞こえてくる
マァクラであろうか,緊張した私の胸が鼓動を強くし私を苦しめさらには腰も抜ける
衛兵がしきりに声をかけてきているようだが,何も聞こえない
小さな人影が見えた
ピンクゴールドの綺麗な髪
そして私が次に目にしたのは見慣れない天井だった
「ここは・・・」
「あ,目覚めた?どこか気持ち悪いところとかない?」
「あなたは,アダーラさん!」
「お,あたしのこと知ってるんだ」
「いやあなたは星麗騎士ですし知らない人のほうが少ないでしょう!あ私のことはどうでもいいんですけど私の近くにちょっと小柄な女の子いませんでしたか?ちょっとピンクでこの世のものとは思えないお人形さんみたいな・・・」
「マァクラのこと?マァクラならそ「マァクラちゃんのこと知ってるんですか!」いやうん拾ったの私たちだし・・・・」
「それで彼女は大丈夫なんでしょうか!」
「え,うん大丈夫だよ,すごい重圧を感じたところに急いで駆け付けたら衛兵に支えられているあなたと,その隣であなたの頬をつんつんしてるピンクの天使がいたわ」
「それでそのピンクの天使様は大丈夫なんでしょうか」
「そこに潜ってるよ」
眼を向ければそこには私以外のものであろうベッドの膨らみが見える
今思えば下半身が異常に暖かい
ちょっと蒸れてそう
ペロっと布団を捲る
こいつ私に抱き着いて幸せそうに寝てやがるぜ。
ほっぺムニムニ
んむぅとか言いながら目をこすっている
「まぶしい」
「心配させないでよねぇ・・・・もう」
「それはこっちのなんだっけ・・・・いきなり倒れてうちビックリした」
「あんたが攫われるからでしょうが!こっちこそビックリしたわ!」
「まぁまぁ落ち着いて,ね,とりあえずご飯にしようね!」
「飯!」
ご飯の話になると急に元気になるマァクラ
私もおなかすいたし後で考えることにしよう