表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/65

秋好む中宮2

「秋日和、紅葉の賀にございます。おとうさま」

「おお、秋好む中宮姫。よう来された。よい香りじゃ」

黒沈香(くろじんこう)にございます」


葡萄えび染めの御小袿こうちき、檜扇を手に中宮が入っ

てきます。絹上敷きににじり寄りながら深々とお辞儀をします。


「父上お久しゅうございます」

「おお、めっきり母御のような声になったのう」

「薫の君をお預かりしてもう5年になりまする」


「紫上が死んだときじゃったから」

「そう、もう九歳におなりです。お父様が夕霧様の時のように

非常に厳しくお育てになされるようでしたので」


「そうじゃ。わしの子はみんな厳しく育てるのじゃ」

「ところが子のない冷泉と私はこの上なく薫の君がかわいくてかわいくて」


「散々甘やかして育てたのじゃろう」

「ええ、ええ、もうすっかり甘やかにお育ていたしました」

「そんなことじゃろうと思っとった」


「でもご心配いりません。薫殿は父上と違っていたって真面目。おなごには

目もくれず学問ばかりなさっておられます。近頃は法華経にもいたく興味

を示されて」

「それは異なこと?」


「しかしお父様は母上の遺言を守るのが非常に大変そうであられましたよ」

「ああそうじゃ。お前があまりに年ごとに美しゅうなるのが悪いのじゃ

齋宮の時はこんなにちっちゃかったのになあ」

老いたる源氏はこのくらいと膝のあたりに手をかざします。


「そんなに小さくはありませんよ。伊勢のお勤めが終わって京に母ともど

ってきた時には、もう母は病に苦しんでおられました」

「やっとの思いで六条の御息所は帰ってこられたこの美しい姫君を連れて」

「よほど思いつめて源氏の君、お父様にどうしても会いたいとの一念で」


「それがこの遺言じゃった。六条の邸をわしにお譲りになる、その代わりに

姫の後見人になること、それともう一つ、絶対に姫には手を出さないこと」


「何度も念を押して母は安らかに亡くなりました」


「そのとおりにしたじゃないか?」

「もう御病気ですね美人に言い寄られてしまうのは?」

「いやいや、美人ばかりとは限らんのじゃ。縁したものは捨ててはならぬ

一生かけて面倒を見るそれが勤めじゃ因果のえにしというもんじゃ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ