雪の音
気が付いたら夜中の2時を回っていた。
俺、明日…もぅ今日か!学校あんだよな…。
女って、酒強いな。改めて思った。まだ飲もうとしてる綾乃。かなり眠そうな京子。そして、すでに寝てる未来…。
『明日、学校だから先に上がりますね。また、良かったら呼んで下さい。』
綾乃は、ニコッと微笑み手を振った。
俺は、フラフラになりながらも自力で帰る事にした。
『司君?良かったら未来送ってってくれない?』
ろれつが回ってない…。綾乃はまだ飲み足りないのか帰るつもりはないようだ。目が据わり頬を赤らめタバコを吹かす。俺は、女を美化する癖があって、出来ればあまりこういう姿は見たくなかった。
アパートの通り道ってのもあり、おぶって帰る事にした。
皆に、軽く挨拶を交わし、店を後にした。
風邪を引かないように、俺のコートを羽織らせておぶった。
あれ?軽いな…。おぶって初めて知った。会う時はいつも厚着だったからわからなかったけど、かなり細いんだな…。
雪の降る中、せっせと歩く。おぶって転んだじゃ済まされないな…。
未来の温もりを感じながら思う。
“一緒に帰ろ”って言った時、どんな気持ちだったのかな…。
頭に雪が積もり、コートにも積もる。でも、俺は…俺達は…なんか、暖かい空間にいた。たまに体の位置を直すように“ヒョイ”と未来を浮かす。
気持ち良さそうに寝てるな…。少し嬉しかった。未来の寝顔を見れた事、こんなに身近にいる事、彼氏になった気分だ。なんてね…。
それにしても、今夜はよく降るな…。夜の雪は、月の光だけで明るく見せる。真っ暗でもちゃんとわかるんだ。暗いのに白い。考えてみると凄い事なのかも…。そんなくだらない事を考えていたら未来がもぞもぞ動きだした。
『あれ?どこだぁ…。寒い…。』
少し眠たそうに目を擦る未来。寝ぼけてんのか?
俺におぶられてるのに気が付いたのは言うまでもない。
『あれ?司君…。ごめんね!』
未来は、急いで背中から下りた。恥ずかしいのか嫌だったのかはわからなかった。
もう少し、あの時間が続けば良かったな…。俺の背中には、未来の温もりと香水の香りが少し残っていた。
『ごめんね…、寒かったでしょ?ハイ!コート。』
未来は、笑顔で優しく肩に掛けてくれた。
『ありがと…。』
袖に手を通し、また歩き始めた。この時間好きだな。
なにを話すでもなく、ただ歩いていた。
足元が覚束ない未来。
『酒飲み過ぎなんじゃん?』
俺は、少し笑いながら問いかけた。
『司君があんな事、言うからじゃんさぁ…。』
ほっぺたをぷくっと膨らませ怒ったフリをする未来。可愛い。
あんな事?未来の顔を見ながら思った。酔ってるな…。自分で何言ってるかわかってるのか?未来は、一人でブツブツ呟いている。そんな未来を見て思わず吹いてしまった。なんか、可愛かった。
いきなり笑い出した俺を見て、驚いた表情をする未来。そしてつられて笑い出した。
シーンとした裏路地。雪の落ちる音しかしない道。俺達の笑い声だけが響いていた。




