白い空気
未来の行きそうな所に顔を出し、未来を探す…。
これだけ探して見つからなかった未来が、俺のアパートのフロアにいた。
激しく降る雨、雷も鳴り響く中、俺の前で意識のない未来が横たわっていた。
一瞬、今何が起きているのか、まったく理解できない…。
数秒、たった数秒…。だが、その一秒がヤケに長く感じたのは何でだろう…。
『おい!未来…。』
肩を揺すり、未来を呼んだ。服、ずぶ濡れじゃないか…。どの位待ってたんだ?こんなに濡れて…。『未来、起きろ!』何度も、何度も呼んだ!
俺の上着を被せ、未来を抱きかかえる。
体が冷たい…。
急いでエレベーターに乗り、部屋に向かった。
未来をベッドに寝かせ、暖房をつけた。
『未来!大丈夫か?』
くそっ!意識が戻らない…。俺は、救急車を呼び、未来を見つめる…。
今、出来る事…
無我夢中で、俺が今、出来る事を探した。
顔を拭き、髪を拭く…。服を脱がせ体を拭いた…。トレーナーを着せ、布団を掛ける。手を握り締め、願う…。
頼む!目を開けてくれ…未来。
目を瞑り、祈る…
時間だけが過ぎていく…。このまま意識が戻らなかったら…。
熱いものが込み上げる…。
その時、遠くの方から音がした。救急車だ!
俺は、立ち上がり外に出ようとした。
俺の手を誰かが握っていた…。俺の手には、真っ白い手。ふと、未来を見た…。
今までたまっていた熱い気持ちが、瞳から一気に流れ込む…。
『未来!』
未来は、弱々しくもニコッと優しく微笑む。
俺は、嬉しさの余り、未来を抱き締めた。『未来…ごめんな?』何度も何度も謝り、涙を流した。
『司君?司君の声、聞こえたよ…。未来の事、呼んでくれてありがと…。』
泣きながら俺の手を握り締める未来。
『司君?大好きだよ…。』
優しく微笑み、眠りにつくように静かに息をひきとった…。
『未来…未来?おい、未来!』
俺は認めない…。未来がこの世から消えるなんて…、絶対に…。
そんな時…
未来の体から、白い空気みたいなものが…、部屋いっぱいに広がる。まるで天国のように澄んだ空間が目の前に…。
え?未来は…。
暖かな陽気…広々とした草原。懐かしい風。心地よい…。
俺は、いつの間にか眠りについていた…。
あれ?未来は?っていうかここは何処?
真っ白な天井…。
気が付いたら病院のベッドに寝ていた…。窓が開いていて、心地よい風が吹いている。
未来と一緒に運ばれたのか…。
俺は、ベッドから降り未来を探しに行こうと…
親父、お母さん?な、何で?
親父達が泣いている…?はぁ?
『良かったね…。』
何が良かったんだ…。
あれ?
今、起き上がったはず…。何で横になってるんだ…。
何か変だ…。
親父達も変な事ばっか言ってるし…。正直、訳がわからなかった…。
後で聞いたんだが、俺は、三年前からずっと意識が戻らない状態だった…らしい。
んじゃ…未来は?
…夢?
でも、この記憶…ハッキリした記憶。何でだ…。
現実を見つめるまで、どの位かかったかな…。毎日のリハビリ。苦しくても未来の事を思い出す度に乗り越えられた…。
今も忘れる事のない未来の記憶。
毎日の努力の結果、松葉杖ではあるが、外に出る事が許される位まで回復した。
日差しを浴び、肌で自然を感じた。
暖かい陽気、広々とした草原。懐かしい風…心地よい。
空を見上げ、大きく空気を吸い込んだ…。『うわぁぁ!』そのまま後ろに転んでしまった…。
『いってぇ…。』
クスクスッ…
転んだ俺を見て、笑っている人がいた。
“何だよ!しょうがないじゃんか…。”って、思いながらも笑って誤魔化す。
優しく声をかけて、手を差し伸べてくれた。
『司君、ありがと…。』




