ライカ様、夕食はどうされますか?
デートだ!
「待て!」
「ライカ、何?」
「確か、この様なお茶会は女性限定だった筈だ」
「そうだよ」
「それなら、俺が呼ばれた理由は?」
「うん。 実はね……」
ルシアの話した内容は、今回招待された貴族令嬢「エルネナーラ=カナル=ディアップル」は侯爵家の娘だが、彼女の母親が病気で伏せているらしい。
勿論、爵位が侯爵だから地位と権力と金を使って治そうとしたが、どうやら特殊な薬草が必要である事が分かった。
直ぐに手配したが、未だに薬草は入手出来ていないみたいで、冒険者ギルドにも依頼したらしい。
「今、その話をしたという事は?」
「……はい。 まだです」
「そこで、ライカよ!」
「……そういう事か。 だがな、Sランク冒険者への依頼料は高いぞ」
「払います!」
「その辺りは大丈夫よ。 彼女の父親は愛妻家で有名だし、未だに社交の場で仲睦まじい姿を良く見るから」
ソフィアやルシアが個人的に招待した友人だ。
高額なSランク冒険者への指名依頼ではなく、冒険者ギルドに貼られている一般依頼で受けてやるか。
「まだ冒険者ギルドに依頼が貼られているな?」
「その筈です」
「さすライ」
「「……さすらい?」」
「ルシアの夕食にだけニガギル追加な」
この世界での「ゴーヤ」だ。
「止めて~! アレ、苦過ぎて嫌いなの!」
「決定事項だ」
「そんな~」
ルシアの顔を見て苦笑いしているソフィアとエルネナーラ嬢だが、2人も苦手なのだろう。
「エルネナーラ嬢」
「はい」
「今から冒険者ギルドに行って依頼を受けてくる」
「……ありがとうございます!」
俺の言葉で、涙を流すエルネナーラ嬢の笑顔に見送られて俺は冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに到着した俺は、依頼を貼られているボードからディアップル侯爵が出した依頼書を取り、受付嬢の所に向かい、この依頼を受けると伝えた。
「これが見本です」
見本として出された複製画の薬草をじっくり見て記憶して、生えている可能性が有る場所を聞いて冒険者ギルドを後にした。
……当日、見つからず野営。
2日目も見つからずに野営。
3日目は中層に入るが見つからず野営。
4日目、深層に入る。
「……見付けた!」
深層で見つかるのなら、あの高額依頼料でも達成されない訳だ。
「急いで戻るか」
俺は、急いで王都に向かって駆けた。
「雷撃弾」
「Ga……」
前方に現れたモンスターを雷撃弾で仕留め、倒れる前に接近してスキル「暴食」で吸収する。
「……冒険者か?」
浅層に戻った時に、少し離れた場所で人の気配と魔力を感じたが、冒険者だろう。
浅層とは言え、中層間近に居るとは大したものだ。
そして、王都の冒険者ギルドに到着すると依頼達成の報告と処理をする。
3日後、エルネナーラ嬢がアポ無し訪問してビックリしたが、無事に母親の病気は回復したみたいで、今は安全を期して療養中らしい。
「本当にありがとうございます、ライカ様」
「俺は貴族じゃないんだから、敬称は要らないぞ」
「いいえ。 母親の恩人を呼び捨てには出来ません」
「諦めなさい。 エルネは結構頑固よ」
「否定出来ないのが、面白いのだけどね」
「……好きに呼べ」
「はい、ライカ様!」
この後、エルネナーラ嬢はソフィアとルシアと一緒に馬車に乗って出掛けた。
元々、ソフィアとルシアは買い物に出掛ける準備をしていたから、エルネナーラ嬢は誘われるままに仲良く3人で出発した。
……俺?
財布と荷物持ち要員になるのが分かっていたのだから断った。
「ライカ様、夕食はどうされますか?」
「どうとは?」
「エルネナーラお嬢様も同伴されますと、周りが有らぬ疑いを持つかもしれません」
「そうだな。 申し訳ないが、エルネナーラ嬢には夕食前には帰って頂こう」
「承知いたしました」
彼は、この屋敷の執事で、ソフィアが王宮で暮らしていた頃の先代の執事長だ。
ソフィアが、この屋敷で暮らすと聞いた彼が立候補した。
ソフィアが信頼出来ると言うから、我が屋敷の執事になる事を承知した。
同じ理由で、メイド長も王宮の先代メイド長だ。
俺や執事がした心配は杞憂で終わった。
ソフィア達は買い物が終わると、我が屋敷で待機していたエルネナーラ嬢の馬車の所に行き、そのままエルネナーラ嬢は馬車に乗って帰った。
ソフィアから「仕事をする為の休暇ではなく、自身を楽しませる為に休暇されては?」と言われて、それもそうだと思って、今日も休暇にした。
そして、ソフィアから「偶には、私と王都を散策しませんか」と誘われて、2人で王都を散策する事にしたが、ソフィアは当然だが変装している。
変装の魔道具に因って、ソフィアの白寄りのプラチナの髪色が暗い茶色に、鮮やかな碧眼は黒寄りの茶色に。
「煩い侍女や護衛達が居ないなんて、新鮮だわ!」
「そうか」
「ライカ。 アレ、美味しそうよ」
「分かった」
ソフィアが指した焼き串を2本買う。
「……美味しい!」
「良かったな」
「ええ!」
ソフィアと屋台を冷やかしながら、偶に買い食いをしているが、危険が無いわけではない。
……此処は「日本」じゃないからな。
変装しているが、ソフィアから滲み出る「ソレ」は平民には見えないから、スリから始まり人身売買等のアンダーな連中から狙われている。
まあ、全て俺が阻止しているがな。
「ライカ様、狙われています」
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