白羽の矢が立ったのが俺だ。
ストックが……
「異議有り!」
「……誰だ?」
「俺の事は後回しにして聞きたい事が有る」
「許可する」
「そこの娼……男爵令嬢に対してルシア公爵令嬢がした虐めとは何だ?」
「い、色々よ!」
「具体的に」
「学園の教科書を破かれたり、水を掛けられたり、足を出して転けさせられたり、噴水に突き落とされたり、上の階段から突き飛ばされたりしたわ!」
手垢まみれのテンプレな上に、婚約者としての正式な注意は一切入っていないな。
しかし、全て想定内だ。
ルシアが準備をしていた書類、俺が読むとしよう。
「具体的にと言った筈だ。 日時も言え」
「……」
「だんまりか。 教科書が破かれたのは?」
俺は強く睨む。
「……さ、3か月前の12月7日よ」
俺も巻き込まれ召喚された後に知って驚いたが、この世界の暦的な数え方が地球と同じなんだよな。
俺は書類の確認をする。
「3か月前の12月7日は……その日はルシア公爵令嬢は体調を崩して休んでいた。
それに、公爵が王城の侍医を呼んだから、それが証拠であり証人となる」
「「「な!?」」」
「水を掛けられたのは?」
「……」
「言え!」
「……い、1月10日よ」
俺は書類をめくり、該当する内容を言う。
「その日は、ルシア公爵令嬢は王城に行き王妃教育を1日中受けていた。
証人が誰かは、言うまでもないな」
こんな感じで論破した。
そして、今日の為に予定を変更させた者を召喚する。
「国王陛下、裁定を」
「「「「「「「「「「「「「……な!?」」」」」」」」」」」」」
奥から悠々と登場する国王と王妃に、宰相と近衛騎士団長。
「父上! 隣国アーザルド王国に向かっていたのでは?」
「そんな事より、ハムザットには他の貴族の爵位に対して、自由にする権限など与えていないぞ」
「そ、それは……」
「それに、ローゼス公爵家のルシア令嬢との婚約破棄を誰が許可をしたのだ?」
「……」
国王の威圧に馬鹿ハムと娼婦リリアンが2歩下る。
「更に、モルガナ男爵令嬢との婚約も誰が許可を出したのだ?」
「……」
国王は、舞台役者の様にマントを拡げて言った。
「聞け!」
「「「「「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」」」」」
馬鹿ハムと娼婦リリアン以外の全員が跪く。
「ハムザットが言った事は全て無効とし、この後、当事者達を交えて協議する事とする。
他の者達は、卒業パーティーを続けるが良い」
「「「「「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」」」」」
そして、別室にて事実確認が始まり、ルシア令嬢の身の潔白は証明され、見事に馬鹿ハムの有責で婚約破棄が成立した。
勿論、ローゼス公爵の爵位が剥奪される事も無く、逆にモルガナ男爵が爵位を剥奪され、王城の下位文官として強制労働となり、娼婦リリアンは本物の娼婦としてブーバット共和国で働く事となった。
最後に馬鹿ハムことハムザット王太子は、王太子としての地位と権限を剥奪され、西の離宮で暮らす事が決定した。
因みに、この西の離宮は王族用の牢屋だ。
……つまり、終身刑だな。
後でソフィアから聞いたが、あの西の離宮送りになると、王子はアレを切られ、王女は薬で2度と妊娠出来ない様にされるらしい。
更に、この西の離宮で働く者は、主は誰かは隠匿されて分からないらしいが、奴隷が従事するから、買収や脅迫は無駄だとか。
卒業パーティーから3週間後の我が屋敷では……
「ソフィア、これ美味しいよ」
「ありがとう、ルシア」
……我が屋敷の新たな同居人となったルシアだ。
ルシアは無事に婚約破棄に成功したが、色々な政治的な思惑が解けない程絡まった結果、ルシアには新しい婚約者候補すら居なくなっていた。
そんな中で、白羽の矢が立ったのが俺だ。
ルシアはルシアで、公爵令嬢として振る舞う必要が無い我が屋敷では、元日本人女性の自分でいられるからリラックスしている。
勿論、親友たるソフィアもルシアの前世を以前から知っていた。
次に、我が屋敷に同居する様になってから知った事が、ルシアの戦闘力は高かった事だ。
どうやら、護衛達に戦闘を止められていたのは弱いからでは無く、強過ぎるからだった。
事の発端は、ルシアのダイエッ……いや、運動に付き合った時に判明した。
ローゼス公爵家の令嬢教育は良い意味で完璧で、ルシアは見事に公爵令嬢としての猫を被っていたが、前世では実戦派の格闘オタクだった。
柔道に空手や合気道を習い、合わせて12段で、ボクシングジムにも通い、そのジムに所属する現役のフェザー級チャンピオンに同じ条件の公式ルールで勝ったとか。
因みに、向こうは接待では無くガチだった。
理由が、負けると罰ゲームでゲイ・バーでの3か月のバイトだったからだ。
……そんな罰ゲームなら、俺でも本気を出すぞ。
そんなルシアだから、俺も楽しく対人戦をする事が出来た。
後は、ルシアから柔道・空手・合気道・ボクシングを習う事で、俺の対人戦の技術向上にも繋がった。
それから数日後の、我が屋敷で開かれたお茶会での会話だ。
「ソフィア王女に、ルシア様。 お久し振りです」
「久し振りですね、エルネナーラ」
「久し振り、エルネ」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。




