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【第7話】監視者との死闘と、“欲望リンク”の発動



 黒い炎の壁は、ジークの槍にあっさり貫かれた。

 空気が裂けるような音と共に、俺の頬を掠める冷たい風。


「遅い」

 ジークの声は機械のように無感情。


 間髪入れず、槍の連撃が襲いかかる。

 目で追えない速度――でも、俺の体はかろうじて反応できた。


 ……いや、これ、俺の反射じゃない。



---


「ユウト、もっと私を信じろ!」

 リリィの声が、頭の奥に直接響く。


「信じるとか言われてもっ……!」


「言葉じゃなくて、欲望で繋がるのよ!」



---


 ジークが一瞬距離を取った。

 その隙に、リリィが俺の胸に手を当てる。


「これから“欲望リンク”を使う。発動条件は簡単――お互いの心を完全にさらけ出すこと」


「完全にって……!? そんなの、ムリ――」


「ムリじゃない。あんた、もう私にいろいろバレてるし♡」


「いや、そういう問題じゃ――」



---


「ほら、目を閉じて。余計なこと考えずに、私のことだけ考えて」


 言われるままに目を閉じると、

 胸の奥で、あの契約の紋様が脈打ち始めた。


 熱い。

 そして……妙に心地いい。



---


 視界が暗転し、代わりに映ったのは――

 俺の中の欲望と、リリィの中の欲望が、黒い糸で絡み合っていく光景だった。


 力だけじゃない。

 支配欲、庇護欲、承認欲、そして――


「……っ!」


 言葉にできない何かが、リリィの方から流れ込んできた。



---


「見えた? これが、あたしの本音」


 それは、誰にも見せない彼女の一面。

 孤独、渇望、そしてほんの少しの――甘え。


 俺の胸が、きゅっと締め付けられる。



---


「……わかったよ。もう逃げない」


「ふふ、そうこなくちゃ♡」



---


 次の瞬間、俺とリリィの身体を黒い炎が同時に包み込んだ。


> 欲望リンク・第一形態――接続完了





---


 ジークの槍が閃光のように迫る。

 でも今度は、怖くない。


「ユウト、行くわよ!」


「ああ――!」


 俺が拳を振ると、リリィの魔力が拳に重なり、黒炎の竜が槍を飲み込んだ。

 炎と金属がぶつかる轟音が、空間を震わせる。



---


 ジークは槍を引き、わずかに口元を歪めた。


「……なるほど。これなら、第二段階に進めるかもしれん」


「第二段階……?」

 問い返す間もなく、空間が元に戻り、ジークの姿は消えていた。



---


 残されたのは、荒い呼吸と、まだ離れないリリィの手。


「ねえユウト……あんた、本当にバカなんだから」


 そう呟いた彼女の表情は、いつものSっ気とは少し違っていた。



---


次回予告(第8話)


【第8話】日常への帰還と、新たな監視者の影


> 試験を終えた二人は一時的に日常へ戻るが、ユウトの体には“リンクの余波”が残っていた。

それは感覚の強化だけでなく、欲望が制御しづらくなる危険な副作用で――

さらに、新たな監視者が学校に転入してくる。







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