【第3話】契約の代償と、もう一人の“契約者”
「……最近さ、なんか……変なんだよ」
次の日の朝、学校の中で俺――一ノ瀬悠翔は、妙な“違和感”を覚えていた。
視線を感じる。
音が消える瞬間がある。
――そして、鏡に映らない“誰か”の気配。
「契約者の感覚が鋭くなってきてるんじゃない?」
小声で俺の肩に乗るのは、相変わらず勝手についてきている小悪魔・リリィ(ロリver)。
「感覚? 何の?」
「悪魔の世界の“影”よ。契約した人間は、あっちの領域にもリンクしてるから、だんだん感づくの」
……つまり、俺の目の前に“何か”がチラつき始めてるのは、悪魔契約の影響というわけか。
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そして昼休み。
俺は校舎の裏で、“それ”と遭遇した。
まるで人のような影が、逆光の中に立っていた。
「やっぱり、君も見えるんだね。“こっち側”が」
そいつは、俺と同じくらいの年齢に見える男子だった。
整った顔立ちに、冷たい目。黒髪に銀色のピアス。
でも……その背中には、黒い羽根が見えた。羽根なんてないはずなのに、俺の目にははっきりと。
「君の契約悪魔は、どんな性格?」
「は? 誰だよお前」
「答えたら、教えてあげるよ。君がこれから何を“失う”のかを」
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背後に、ふっと影が現れる。
リリィが、大人モードで立っていた。
さっきまでのロリが、まさかの爆乳S悪魔に変化してるというのに――男はまったく驚かない。
「やっぱり、君……“リリィ”だね。久しぶり」
リリィが、ふっと目を細めた。
「……あら、あんた、生きてたんだ」
「生きてた? おいリリィ、どういう――」
「説明は後。とにかく今は、近づくな。そいつ、“元・契約者”よ」
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その瞬間。
男の目から感情が消えた。
「僕はもう、“元”なんかじゃない。
もう一度、“本物の契約”をやり直すために来たんだ――お前の契約者を、奪いに」
次の瞬間、空間がノイズのように歪んだ。
モノクロに染まる校庭。
周囲の時間が止まる。
聞こえるのは、心臓の音だけ――
これは、昨日までの“日常”にはなかった空気だ。
「おい、待てよ……何だよこれ……!」
そして、男が手に持った“鏡”のような魔具から、別の悪魔が浮かび上がった。
リリィとは違う。もっと禍々しい。感情のない白面の女悪魔。
「やっぱり、契約は甘くないんだよ。
欲望を満たした分だけ――何かを失う。
君は、何を差し出すつもり?」
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世界が、変わろうとしていた。
リリィの背中の尻尾がうねり、彼女はゆっくりと前へ出た。
「……絶対に渡さないわよ。
この子は、“あの時の失敗”とは違うんだから」
「へえ……じゃあ、壊れるかどうか、試してみようか」
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次回予告(第4話)
【第4話】“欲望”を食らう悪魔と、初めての戦い
> 契約者の欲望を喰らい、依存させていく“白面の悪魔”。
リリィと悠翔は、初めての“契約者バトル”に巻き込まれる。
欲望を守るのか、欲望に呑まれるのか。
初めての魔力覚醒と、リリィの封印が一部解除される……!