第1話:見えるんだ、変なのが。——そして、出会ってしまった
朝。
いつも通りの登校時間。俺――**一ノ瀬 悠翔**は、ちょっとだけ憂鬱だった。
なんでかって?
変なモノが、また見えるからだ。
幽霊、妖精、影……そんなファンタジーなもんじゃない。
もっとこう……“得体の知れないやつ”って感じ。だいたい人の形してないし、話しかけても無視してくるし。
今日もそれは、校門の前にいた。
「……おい、なんだよアレ」
猫? 犬? いや、なんだろうな、あれ。
黒い影がもやもやと浮かび、こっちをじーっと見ていた。
だんだん形が変わって……小さな女の子の姿になった?
え、待って、角? しっぽ??
「やっっっっと見つけたぁ〜っ!」
いきなり抱きつかれた。
「へ? え? ちょ、おまっ、だれ!?」
「わたし、リリィちゃん! あんた、契約してくれたでしょ? 昨日、夢の中で♡」
「はああああああああああああああああああ!?」
俺の声は、校門前に高く響き渡った。
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◇
保健室で、俺はようやく落ち着きを取り戻した。
隣に座っているのは、小学2年生くらいにしか見えない――自称「悪魔」のちびっこ少女。
「本当に悪魔なのか?」
「うん、ほらこれ」
リリィが頭をぺこっと下げると、髪の中から小さな角が見えた。
背中の方には、ふにゃふにゃした尻尾みたいなものが。
「ほらね〜♡ 悪魔でしょ? 契約したからには、あんたを守ってあげるよっ」
「いやいやいや、昨日なんて夢も見てないぞ? てか、契約って何を――」
「だーかーら! しちゃったの! 深層欲求契約ってやつ! あんたが無意識に『誰かに守られたい』って思った瞬間、ビビッと来たのよ、私に!」
「勝手に契約すんなああああ!!」
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けれど、それはもう“破棄できない”らしい。
俺の中にある“欲望”に結びついてしまったらしい。
つまり――このちびすけ悪魔は、俺のそばに居座るつもりなのだ。
「それにね〜? 私、ちゃんと戦闘もできるんだよっ!」
「戦闘って……なんの……?」
「この世界、思ったよりヤバいんだよねぇ〜。だからさ、ちょっとだけ“変身”するよ!」
リリィがにやっと笑った。
「えっ……まって、ちょっと、何す――」
リリィの体が、黒い炎に包まれた。
ぶわっと膨らむ影。
小さな体が、ぐいぐいと大きくなっていく。
角は鋭く伸び、尻尾は艶やかにうねり、服が破ける音まで――
そしてそこに現れたのは、信じられないほど色っぽい大人の女性。
胸も、腰も、脚も……めちゃくちゃスタイルいい。
だけど――その瞳は、悪魔のままだ。
「うふふ……どう? これが“欲望解放”。
あんたの中の“ちょっとエッチで守られたい願望”、全部ダダ漏れ♡ ほんっと単純だよね、男子って」
「ちょっ、まっ、服!? 姿!? え!? お前さっきまでちびっこだったじゃ――」
「言ったでしょ? 私は悪魔なのよ、リユートくん♡
これから、いっぱい“私”に見入ってね? じゃないと……もっと、欲しくなっちゃうかもよ?」
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俺の平凡な日常は、こうして終わりを告げた。
そして、リリィとの“危険で甘い”契約生活が始まる――!