第27話
第27話:幻影の騎士団と『生命の理の欠片』
「ルーナ! ゼロ! 来るぞ!」
悠斗は、短剣を構え、ルーナを庇うように一歩前に出た。幻影の騎士たちは、虚ろな瞳で悠斗たちに迫る。彼らは実体を持たないが、その存在からは、王の『執着』と『絶望』が凝縮されたような、重苦しい精神の波動が放たれている。
「『主』、『精神攻撃』を『確認』。同時に、『過去の記憶』が『干渉』を『試みています』。これは、『王』自身の『過去の栄光』の『具現化』によるものです。対処を『推奨』します。」
ゼロが、悠斗の異変に気づき、すぐに警告を発した。悠斗の脳裏には、王の『記憶』と思しき、まばゆいばかりの宮殿の映像や、歓声に包まれる王の姿が次々とフラッシュバックする。それは、彼の精神を乱し、戦闘に集中させないための攻撃なのだろう。
「くそっ、厄介な攻撃だな!」
悠斗は、『精神抵抗』スキルを最大限に発動させ、脳内に流れ込む幻影を押し戻そうとする。しかし、王の精神攻撃は、これまでで最も強力だった。
「命令……貴様ら……我が『王国』に……跪け……」
王の言葉と共に、幻影の騎士たちが、悠斗の周囲を取り囲んだ。彼らは、実体がないにもかかわらず、剣を振り上げ、悠斗の『精神』に直接斬りかかってくる。物理的な痛みはないが、魂を削られるような感覚に、悠斗は歯を食いしばった。
「ルーナ、俺に力を貸してくれ!」
悠斗は、ルーナの手を強く握りしめた。ルーナは、悠斗の言葉に応えるかのように、彼の手にギュッと自分の手を重ねた。彼女の体から、温かい光が悠斗の体へと流れ込み、ユニークスキル『セフィロトの樹の恩寵』が発動する。
【ユニークスキル『セフィロトの樹の恩寵』が反応しています!】
【対象:獣人族の少女の魔力を限界まで吸収します!】
【『ゼロ』の『理』による『干渉』を『確認』! ステータス強化に加え、『精神防御』が『増幅』されます!】
【一時的にステータスがさらに大幅に上昇します!】
悠斗の体に、力が漲る。そして、頭の中で木霊していた王の記憶や幻影が、少しずつ遠のいていく。
ステータス(一時的超々々上昇)
力: 16 → 130 (+114)
速さ: 15 → 110 (+95)
体力: 17 → 100 (+83)
魔力: 0 → 0
運: 11 → 11
知性: 16 → 16
「よし! この程度で、俺は倒せないぞ!」
悠斗は、短剣を構え、幻影の騎士たちに突進した。彼らは実体がないため、物理攻撃は効かない。だが、悠斗には『共鳴(絆)』スキルがある。
「『解析』! 奴らの『魂』の『理』を! そして、『王』の『執着』の『本質』を……!」
悠斗は、探知スキルと解析スキルを組み合わせ、幻影の騎士たち、そして彼らを具現化している王の『理』を深く探ろうとした。彼らの存在は、王の『記憶』と『執着』によって成り立っている。ならば、その根源を揺るがせばいい。
(王は『栄光』に囚われている……その『栄光』を否定すればいいのか!? いや、それは逆効果かもしれない……。むしろ、その『栄光』を『理解』し、『共鳴』することで、その『歪み』を『修正』する……?)
悠斗の脳裏に、新たな作戦が閃いた。彼は、幻影の騎士たちを避けながら、王の座す玉座へと近づいていく。
「『主』、危険です! 『王』の『精神防御』は『強固』です! 無謀な『接近』は、『記憶の強制改変』を『招く』可能性が『あります』!」
ゼロが、悠斗の行動に警告を発した。しかし、悠斗の決意は揺るがなかった。
悠斗は、王の目の前に立ち、その光を失った甲冑の奥に、意識を集中した。そして、彼の『共鳴(絆)』スキルを発動させる。ルーナとの『絆』の光が、悠斗の体から溢れ出し、王へと向かっていく。
「『共鳴(絆)』! 過去の『栄光』よ……我が『心』に……」
悠斗は、王の『記憶』に共鳴しようと試みた。王が放つ、かつての王国の輝き、民衆の歓声、忠実な騎士たちの姿……。それらの『記憶』が、悠斗の脳裏に流れ込んできた。それは、美しく、そして切ない、栄光の記録だった。
しかし、その『栄光』の奥には、深い『絶望』と『後悔』が隠されていた。大洪水、そして王国を救えなかった無力感。王は、その『絶望』から逃れるために、『栄光』の記憶に囚われ、亡霊と化したのだ。
「ぐ、ぐぅううううううう……!? こ、この『共鳴』は……!? わ、我が『記憶』が……『揺らぐ』……!?」
王は、悠斗の『共鳴(絆)』スキルに、これまでにない苦痛の声を上げた。その甲冑から、黒い靄が激しく噴き出し、幻影の騎士たちの姿も、一時的に揺らぎ始める。
「今だ、ゼロ! ルーナ!」
悠斗は、王が苦しんでいる隙を見逃さなかった。彼は、ゼロに王の物理的な動きを封じるよう指示し、ルーナには、その『純粋な魔力』を『共鳴(絆)』スキルへと集中させるよう頼んだ。
「『主』の『命令』を『遂行』します!」
ゼロは、素早く王の懐に飛び込み、その銀色の拳で、王の甲冑を正確に打ち抜いた。王の体が激しく震え、その動きが止まる。
そして、悠斗は、王の隣に鎖に繋がれていた、白いローブの人影へと視線を向けた。その存在からは、微弱だが温かい『生命の理』の波動が感じられる。それが、ステータスが言っていた「新たな仲間」なのだろう。
(この存在に『共鳴』して、『王』の『執着』から解放するんだ!)
悠斗は、ルーナと共に、その囚われし存在へと『共鳴(絆)』スキルを集中させた。二人の間に生まれた温かい光が、囚われし存在を包み込む。
「う……うぅ……この、温かさは……」
囚われし存在から、か細い声が漏れた。そのローブが、光によってゆっくりと溶け出すように消えていく。そして、その下から現れたのは、淡い緑色の髪と、宝石のように透き通った瞳を持つ、美しいエルフの女性だった。彼女の耳は長く、先端が尖っており、その背中には、光を失った透明な羽が生えている。
彼女の首には、黒い鎖が巻き付いている。それが、彼女を王に囚われていた証だろう。
「『理』の……解放……完了……」
ゼロが、淡々と告げた。エルフの女性の体から、力が抜けたように、彼女は地面に崩れ落ちそうになった。悠斗は、慌てて彼女を支えた。
「大丈夫ですか!?」
エルフの女性は、ゆっくりと目を開け、悠斗の顔を見上げた。その瞳には、混乱と、そして微かな希望が宿っている。
「あなた……は……?」
彼女の声は、まるで数百年もの間、言葉を発していなかったかのように、掠れていた。
【新しい仲間を獲得しました! 『エリス』(古代エルフ・真理の守護者)】
【『エリス』は、かつて『神の恩寵』を受けた『王』の『側近』であり、『生命の理の欠片』を守護していました。彼女の『記憶』と『力』は、『王』の『執着』によって『封印』されていましたが、あなたの『共鳴(絆)』スキルにより、『解放』されました。彼女は、『生命の理』に深く通じており、あなたの『真の魔力』の覚醒に『不可欠』な存在となるでしょう。】
悠斗の目の前に、新たな仲間獲得のメッセージが浮かび上がった。『エリス』。そして「生命の理の欠片」を守護していた存在。これは、彼が探していた、セフィロトの欠片の一つに違いない。
「『王』の『精神』に、『負荷』がかかり、『行動原理』が『混乱』。一時的に『機能停止』しました。『生命の理の欠片』の『回収』を『推奨』します。」
ゼロが、悠斗に指示を出した。王は、悠斗たちの『共鳴(絆)』と、ゼロの物理攻撃によって、その場に膝をついていた。彼の甲冑の隙間から、淡い緑色の輝きが漏れている。それが、『生命の理の欠片』なのだろう。
「ルーナ、エリスさんを頼む! 俺は、この欠片を回収する!」




