第20話
第20話:『理の守護者』の攻略と深淵の記録
「今度は、俺の番だ!」
悠斗は、短剣を構え、新たなスキル『解析』で得た知識を総動員して、残りの二体の『理の守護者』の行動を予測した。
一体の『理の守護者』が、悠斗に向かって金属製の拳を振り上げた。しかし、悠斗の『解析』スキルは、その拳が振り下ろされる角度、速度、そして着弾点までを正確に予測していた。彼はまるで未来を見ているかのように、寸前で体をひねり、攻撃を完璧に回避した。
「目標の『軌道』を修正。再計算:完了。次なる『排除』プロセスを実行。」
守護者は、機械的な声でそう呟きながら、悠斗の回避行動に合わせて、素早く次の攻撃に移ろうとした。しかし、悠斗はそれよりも早く動いていた。
悠斗は、その守護者の足元に、先ほど『理の傀儡』が残した『理の欠片』を錬成スキルで加工し、小さな球状にしたものを転がした。
【錬成:『理の攪乱弾』】
「目標、不明な『物質』を検知。データベースに合致せず。思考プロセス:停止。」
守護者は、足元の『理の攪乱弾』に気を取られたのか、再びその場でフリーズしてしまった。その隙を見逃さず、悠斗は守護者の背後に回り込み、短剣をその装甲の隙間にある、動力源らしき部分に突き刺した。
ザシュッ!
守護者は、奇妙な電子音のようなものを発しながら、その体が激しく震え、やがてバラバラと崩れ落ちた。土と石、そして金属片が散らばり、中心からは新たな『理の欠片』が転がり出た。
「……二体目、撃破!」
悠斗は、息を荒げながら、最後の『理の守護者』に視線を向けた。その守護者は、未だ広間の奥の壁に向かって、紋様をなぞり続けていた。
「命令……遂行……壁の『紋様』を……記録……『重要情報』として……保存……」
その姿は、あまりにも間抜けで、悠斗は思わず笑いそうになった。だが、これで全ての脅威は去った。
「さてと、お前は……どうしようかな」
悠斗がそう呟くと、最後の『理の守護者』が、ピタリと動きを止めた。そして、まるで思考を切り替えたかのように、悠斗の方へゆっくりと振り返った。
「侵入者……貴様の『解析』は……我が『理』を上回る。新たな『命令』を……下せ。我は……『任務』を遂行する……」
守護者の機械的な声には、なぜかどこか諦めのような響きがあった。悠斗は驚いた。こいつ、まさか話が通じるのか? いや、それとも、ただ『解析』スキルによって、彼の行動原理を理解されたと認識しただけなのか。
(『新たな命令』を……? こいつを仲間にできるのか?)
悠斗は、ステータス画面に目をやった。
【ステータス:魔力(未覚醒)】
【助言:『理の守護者』は、この世界の『理』を体現する存在です。その『行動原理』を完全に『解析』し、『論理』を書き換えることができれば、あなたの『配下』とすることも可能です。ただし、その『忠誠』は、あくまで『命令』に依存します。】
「なるほど……言ってみるもんだな」
悠斗はニヤリと笑った。これは面白いことになった。
「よし、お前は……俺の『配下』となり、俺の『命令』を遂行しろ。今の命令は、『この迷宮の最深部まで、俺たちを安全に導くこと』だ!」
悠斗がそう命令すると、守護者は一瞬停止し、その瞳の光がフッと揺らいだ。
「……命令……受諾……『安全な経路』を……検索……完了。目標の『安全な誘導』を……開始する。」
守護者は、そう言って、悠斗たちに背を向け、広間の奥にある新たな通路へと歩き出した。その動きは、先ほどまでのようなぎこちなさはなく、どこかスムーズで洗練されているように見えた。
「やったな、ルーナ! 仲間が増えたぞ!」
悠斗がルーナにそう言うと、ルーナは不思議そうな顔で、守護者の後ろ姿を見つめていた。その瞳には、まだ警戒心が見え隠れしている。
【『セフィロトの樹の恩寵』の効果が切れました】【獣人族の少女との繋がりを一時解除します。】
ステータス
力: 9
速さ: 8
体力: 10
魔力: 0
運: 7
知性: 10
【経験値獲得】
理の守護者: 250EXP x 2 = 500EXP (残りの一体は配下となったため経験値なし)
【レベルアップ!】
レベル: 7 → 8
ステータス
力: 9 → 10
速さ: 8 → 9
体力: 10 → 11
魔力: 0 → 0
運: 7 → 8
知性: 10 → 11
称号
『異界の迷い人』
『最初の試練を乗り越えし者』
『弱き者を救いし者』
『ゴブリン殺し』
『シャドウウルフ討伐者』
『真理の探求者』
『純粋なる絆の守り手』
『死の回廊の征服者』
『傀儡を打ち破りし者』
『理の支配者』
悠斗は、ステータスの上昇を確認し、満足げに頷いた。新しい称号『理の支配者』。
『理の守護者』に先導され、悠斗とルーナは迷宮のさらに深部へと進んでいった。通路は、これまでよりもさらに古く、壁画もより複雑で抽象的なものが多くなっていた。そして、通路の脇には、いくつもの小さな部屋が点在しており、その中には、古代の文献らしきものが積み上げられている場所もあった。
「ここが、真の『神の回廊』なのか……」
悠斗は、探知スキルを起動しながら、周囲の「理」の波動を感じ取った。この迷宮は、まるで生きているかのようだ。
しばらく進むと、守護者がピタリと足を止めた。その視線の先には、これまでの魔物とは明らかに異なる、異様な存在がいた。
それは、宙に浮かぶ巨大な水晶だった。透明な水晶の内部には、無数の古代文字が刻み込まれ、絶え間なく明滅している。そして、水晶の周囲には、黒い靄のようなものが纏わりつき、そこから、不気味な囁き声が聞こえてくるような気がした。
【鑑定!】
【記憶の記録者(不完全体)】
分類: 古代遺物(変質)
危険度: 極めて高!
備考: この迷宮に蓄積された『理』と『記憶』を記録する存在。しかし、その『理』が歪み、制御不能となっている。対象の『記憶』を奪い、己の糧としようとする。
「記憶の記録者……!?」
悠斗は、ステータス画面に表示された情報に、息を呑んだ。これは、シャドウロードや『理の傀儡』とは、全く異なる種類の敵だ。物理的な攻撃だけでなく、精神や記憶にまで干渉してくるというのか。
【ステータス:魔力(未覚醒)】
【警告:『記憶の記録者』は、あなたの『記憶』に直接干渉し、その『理』を歪めようとします。特に、あなたの『未覚醒』の魔力は、この存在にとって『栄養源』となり得ます。あなたの『真の魔力』が覚醒する『啓示』は、この戦いの先にあります。しかし、敗北すれば、あなたの『存在』そのものが歪む可能性も……。ふぉっふぉっふぉ】
ステータスからの警告は、悠斗の脳裏に直接響いてきた。その声は、相変わらず楽しげで、そして挑発的だ。
「おいおい、そんな大事なこと、もっと早く言えよ!」
悠斗は、思わずステータス画面にツッコミを入れた。しかし、そんな悠斗の言葉を無視するように、『記憶の記録者』は、その水晶の内部から、黒い光の球を放ってきた。
「ユウト……怖い……」
ルーナは、悠斗の服をギュッと掴み、震えていた。悠斗は、ルーナを庇うように一歩前に出た。
「覚悟しろ、記憶の記録者! 俺の記憶は、誰にも渡さない!」
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