相合傘
「傘持つぞ?」
雨の中西垣は俺を自分の持っていた傘の中に入れているが、俺と西垣では多少とは言え身長に差がある。 それによって西垣が腕を俺の頭よりも上に挙げ続けなければならないため、部活終わりでもある西垣の腕が既に振るえながら傘を支える形になっており、お互いに中央以外はそれなりに濡れてしまっていた。
「いえ・・・大丈夫・・・です・・・」
そんな心配を跳ね返すように西垣は言葉を返しているが、明らかに危ない。 だが女子の手から無理矢理傘を奪おうとするほど俺も強引には動けない。
「大変だねん。 心配をしてくれている積和君とは裏腹に、必死に頑張ってるニッシー。 意外と頑固者コンビだよねぇ。」
「ここに来るまでに既に相棒が濡れた体だったのも要因かもしれぬな。 急な雨は予測を越えた自然現象。 心配するのも無理はないだろう。」
「後ろで喋ってないでなんか助けてくれよ。 というか芦原の傘に入れろよな。」
そんな状況を後ろから付いてくる引間とついでに合流した芦原があれやこれやと言ってくる。 2人もそれぞれ傘を差している。 なんだったら引間は折り畳みだが、芦原は普通の傘だ。
「相棒に助け船を出すのも良いのだが、今目の前で繰り広げられている青春を手放す程、我も人の心が無い者ではない。」
「もう少しで雨も止みそうだし、もう少しの辛抱だと思ってさ。」
「辛抱ねぇ・・・」
実際相合傘なんてものをやる機会が本当に訪れるとは思っても見なかったのは事実だし、必死な姿の西垣の姿は、こう言った状況ではあるもののお転婆さがあり可愛さが勝ってしまう。
そんな風に思っていると、雨粒が傘に当たる音が聞こえなくなり、空は暗いが雨が止んだようだった。
「西垣。 もう傘は大丈夫だぜ。 というかここで帰り道が変わるから。」
「本当ですね。 別れる前に雨が止んで良かったです。」
そう言って西垣は折り畳み傘をしまう。 改めて自分の体を見ると、完全に雨を防げるわけもなく、衣替え期間で学ランを着ていない俺はシャツが濡れてしまっている。 上からの雨は良かったが、横からは流石に防ぎきれなかった。
「帰りも気を付けてくださいね。」
「ああ、そっち・・・もな・・・じゃあな・・・」
俺は西垣の方を見た後に、すぐに目線を逸らして自分の帰る道へと歩みを進めた。
「・・・バレてない・・・か?」
西垣の方を見て、西垣も雨に濡れているのだから、そのシャツも当然濡れている。 それのせいでシャツは西垣の体のラインにピッタリと張り付いており、更に濡れて透けてしまっていたので、その一瞬だけ見えてしまったのだ。
「・・・いかんいかん。 西垣を見る目を変えちゃいけない・・・!?」
頭を切り替えようとしたその時、背筋に寒気がしたので振り返る。 だがそこには誰もこちらを見ている様子はなかった。
「・・・なんだったんだ?」
とにかく今日は帰ろう。 そんな誓いを立てて俺は家に帰る事にした。
そして家に帰った俺は何時も通りの夜を過ごしたが、翌朝恐れていた事態が発生するのだった。




