帰れない雨
「嘘だろ・・・」
休日に趣味を満喫した後の週始めの放課後。 俺は部活に行くために昇降口を出たのだが、先程まで太陽の見えていた空は、急に雨模様になり、土砂降り程ではないにしても、結構な勢いで地面を濡らしていた。
「天気予報でも確認したのに・・・ 通り雨か?」
今朝の天気予報を信じていないわけでなかったが、まさかいきなり降られるとは思っても見なかった。
「弓道場までの距離はここから走って3分。 こんな雨の中で本当は走りたくないが・・・行くしかないか!」
降りしきる雨の中を走りながら、俺は部活が終わるまでには止んでいてくれていることを願った。
そしてその願いは届かなかった。
「・・・大丈夫かい積和君? ここに来た時もずぶ濡れだったけれど。」
「・・・流石に家までノンストップで走り続けられる自信はないです。」
たまたま隣にいた臼石先輩から心配をされてしまった。 放課後が始まった時よりは弱くはなっているものの、地面からの雨粒の跳ね返りなんかを考えると、家に帰る頃には鞄も服もずぶ濡れになる。 それは避けたいのだが、今の空模様では止むのを待つと夜になってしまうだろう。
「迎えの方はどうだ?」
「両親は普通に仕事です。」
島崎部長から意見を言われるがすぐに返す。 恐らく姉さんもどうするか悩みかねているかもしれない。
「他に迎えに来れそうな人物は?」
「親戚も近くにはいませんから・・・ん?」
臼石先輩とそんな会話をしていたら、弓道場の前で傘を差しながら立っている人物を確認できた。
「あれ、もしかして西垣さんでは?」
まだ文学少女モードの引間からそう言われて、改めて見れば確かに西垣であった。 なんで西垣がこんな雨の中いるのか分からないが、これ以上濡らせる訳にもいかないので、俺は部室を出ることにした。
「西垣。」
声をかけると西垣は俺の方を見て心配そうな表情を見せながら傘の中に俺を入れた。
「なにやってるんだ。 わざわざこんな雨の中で。」
「積和君が傘を持っていないでこちらの部室に来ているところを見てしまって。 それで・・・」
西垣の心遣いはありがたい。 ありがたいがそれでもやはり待っているまでしなくてもと思ってしまう。
「あの、まだ、濡れていますよ?」
「傘が小さいからだろうな。 雨とちょっと止んできたみたいだから俺は別に・・・」
「駄目です。」
何時ものどこか掴み所のない雰囲気から、強気な勢いで西垣が詰め寄る。
「私の事よりも、自分の事を心配してください。 積和君は私のために体を張りすぎです。 もう一人の私、エムゼの時だって・・・」
「分かった。 分かったからグイグイ来ないでくれ。 傘が小さい事もあって近い・・・」
向こうも部活終わりなのだろうが、西垣から甘いような匂いがしてくるのだ。
「おーい。 ウチの事を忘れてないかいお二人さん。」
引間がこちらに声をかけられて俺も西垣も我に返る。 とりあえずこの場から離れようと西垣の傘の中に入れられて動き出すのだった。




