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補導前に戻ってこれて

 改めて時間を見れば午後8時。 高校生ならギリギリの範囲の時間になっていた。 まずは両親に連絡を入れる。 遅くなったことよりも連絡が無かったことの方がよっぽど怒られるかもしれない。


「つーかお前。 その顔の腫れはどう説明する気だよ。」


 エムゼに言われて気が付いた。 こっちは一方的に殴られただけだし、なんだったら腫れた部分が少し痛む。 見て分かるぐらいに腫れているのだ。 なにも聞かれないわけがない。


「素直に話すしか無いだろうな。 そっちこそ、今はその口調だけでも控えてくれよ。 仕草はそれっぽくしてくれてるならさ。」


 時間は遅くなってきているとはいえ人がいないところを通っているわけではない。 誰が見てるかヒヤヒヤものだ。


「俺もやり過ぎたかとは思ってるよ。 戻るのは主人格の意識がある程度出ている時だけだ。 入れ替り自体はスイッチみてぇなものだからな。 オレも事が済みゃ引っ込んでたしよ。」

「本当に西垣が家に帰るまでに元に戻るんだろうな? そっちにまで説明をするのは勘弁だぞ?」

「そこまでは心配するな。 今日は父親も出掛けてる。 一応それっぽい連絡は来てたが向こうも帰りが遅くなるらしいからな。 今帰ってきてない事に連絡がないってことはあっちも帰ってないんだろうよ。」


 ならば尚更帰らなければならないだろう。 ようやく駅について俺達は電車に揺られながら自分達の最寄りの駅に帰ってくることが出来たのだが


「・・・結局戻らず仕舞い・・・か。」

「なんだ? オレだと不満なのか?」

「そのまま戻らなかったらどうしようとは考えてはいるけどな。」


 今日1日で様々なことが起こりすぎた。 正直帰って寝て、次の日はゆっくりしたいところではあるが、このままの西垣、エムゼのままで帰らせるのもほんのり良くないと思った。


「今後の課題が増えた気がするな。」

「おいおい・・・」


 そんな独り言を呟くと、エムゼは駅の建物の影に俺を押し込んだ。


「言ったよな? それ相応の対応をしてもらうと。 お前には本当に感謝してるんだ。 その想いに溜め息たぁどういう了見だ。」

「頼みを聞いて貰うのに人を縛ったんだから、素直に受け止められるか。」

「つまりこう言いたいのか? 感謝の念を伝えろと。」

「いやそこまでは・・・」

「それならこれをやるよ。」


 これってなんだと思っていると、エムゼは俺に顔を近付けて、そして

 腫れ上がった頬に自分の唇をつけた。 痛みのせいで感触が伝わらなかったが、それでもされた事実はあった。


「・・・え?」

「・・・ようやくお目覚めみたいだからよ。 あとは任せたぜ。」

「は? 任せたって・・・」

「・・・積和君?」


 俺をキョトンとした声で呼んだのは、先程までいたエムゼではなく、西垣の方だった。


「あ、西垣。 今日のところは帰ろう。」

「それはいいんですけれど・・・いつの間に帰ってきたのですか? それに服がちょっと汚れて・・・」

「・・・その辺りは明日説明するよ。 だけらさ。」


 そう言って俺は西垣をとりあえず帰し、また俺自身も家に帰る。 あの時触れられた筈の感触は、痛みにしかならなかった。

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