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解放

「お前の頼みは聞いたんだ。 そろそろ俺を縛るのを止めてくれないか?」


 事態は終息したものの今の現状がなにも変わってはいない。 俺はいまだに拘束されたままなのだから。


「それはまだ出来ねぇな。 こっちも久々に出られたんだ。 もう少し余韻に浸らさせな。」

「・・・よくよく考えりゃ、こうして俺を縛ってるなら、別に俺を置いていって自由に行けばいいだろ。 なんで俺と律儀に西垣の入れ替わりを待ってるんだ?」


 今はエムゼが西垣の身体の所有権を握ってる。 それなのに俺を拘束した上で俺にあんな頼みをしてきて、尚且つこいつは今俺の目の前で待っている。 凶暴そうな感じなのに何故だろうか?


 そんな指摘をしたからかエムゼは頭をかいた。 あーあー、綺麗な髪が・・・


「オレはこいつの出したくない感情を人格として作り出された存在だ。 本人が望んでねぇことまでする気はねぇんだよ。 あとはあれだ。 お前と話すために少し長く寝てもらってるんでな。」

「・・・エムゼって性格は凶暴な筈なのに罪悪感持ってるのかよ。」


 その言葉が癪に障ったのか、突如として俺の前に立った。


「言っとくけどな。 こいつは小さい頃から柔道をやってんだ。 お前とは鍛え方が違う。 分かるか? 力負けするのはお前の方なんだからな。」

「そんなものは分かってるさ。 情けないが純粋な力勝負なら勝つ見込みは俺には無いだろうな。 でもよ。 さっきの奴らが報復に来るかもしれないんだ。 戻ることは出来なくても離れることは出来るだろ?」

「あー言えばこう言う奴だなお前は。」


 呆れられたかと思えば今度は悪い顔をし始めた。 西垣の顔が百面相レベルで変わるのはちょっと新鮮かもしれない。


「少しくらいお前の身体で遊ぶのも悪くないかもしれないな。 喜べよ。 学校では高嶺の花のような存在のこいつに弄ばれるんだ。 嬉しいだろう?」

「興味はあるけど、それは本人と同意の元でやってもらいたいものだね。」


 エムゼと西垣を切り離した存在にするわけではないが、西垣の知らないところで知らない既成事実を作られるのはたまったものではないだろう。


「・・・はぁ、くそ真面目な奴め。」


 そうエムゼが言うと縛っていたロープから俺を解放してくれた。


「ま、この場を離れるって考えは賛成だ。 さっさと帰るぞ。」


 嫌そうな表情をしながらもエムゼは歩いていく。 建物を出て空を見れば、月と星が自分達の街では見られないくらいに輝いていた。


「ま、こいつの家に着く前に戻ればいいがな。 その辺りまでは保障出来ねぇぞ。」

「とりあえず人が増えてきたら西垣らしくして貰えると助かる。」


 そんな風に言いながら俺達は港町を去るのだった。

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