縛られ、現れ、聞かされる
「うっ・・・」
それから目が覚めると、俺はどこかの建物の中にいた。 すっかり日が暮れてしまってはいるが、月明かりがあるせいかまだ明るく感じる。
「ここは? ・・・っ!?」
体を動かそうと思ったら、柱に縛り付けられていた。 足下も縛られて、腕は後ろに回されている。
「ようやく目が覚めたか?」
天窓から差し掛かる月明かりに照らされてその人物が現れる。 それは西垣の姿ではあるが、声色や喋り方からもう一人の人格の方だと理解した。
「お前がこれをやったのか? なにが目的だ?」
「すげぇなお前。 自分の状況と立場をもう理解したのか?」
もう1人の人格の西垣はそんな俺の言葉に驚いていた。 最後に見た光景と今の西垣の人格が入れ替わっているのなら、大体の予測はつくからな。
「まあ話が分かってるならそれでもいいな。 結論から言やぁあいつらはオレがとっちめた。 デカイ奴を伸して威嚇したらヒイコラ言いながら逃げていきやがった。 情けねぇ様を見せてやりたかったぜ。」
「そうかい。 それでなんで俺が捕まってるんだよ。 あとその格好で胡座は止めてくれ。 スカートが長いとはいえ目のやり場に困るから。」
口調は男っぽくても見た目は完全に西垣なのだ。 普通なら居たたまれなくなる。
「くっくっくっ。 2、3回程しか顔を出してないのに、それでも尚オレと対話をするか。」
「元の西垣の人格はどうなってる?」
「今は眠って貰ってるさ。 言っただろ? 次に出てきた時にはそれ相応の対応をして貰うとな。」
座っていた椅子を降りて俺の方に向かってくる西垣。 月明かりや銀髪の揺れ具合。 もう一人の人格の表情のことも相まってか、やけに妖艶にも見えてくる。
「それにしてもどうだ? くっくっ。 か弱い女子を前にしてこうして縛られたままでいるのはよ?」
「本当にか弱かったらどれだけ良かっただろうな。 別にこれは今の西垣だから言ってることじゃねぇ。」
「ボロボロのくせに威勢を上げるたぁ大したもんだがな。 ま、そうでなけりゃ困るけどな。」
そう言って西垣は俺と距離を取り、そしてもう一度振り返る。
「折角出れたんだ。 おまえにゃ感謝してる。 だからこそお前には俺の頼みを聞く権利がある。 拒否権はねえがな。」
「それでも拒否したら?」
「ここで服を脱いでからお前の拘束を解いて社会的に尊厳を抹消してやるよ。」
とんでもねぇ脅しをしてきやがった。 身体が女子だからって変な方向に有効活用するんじゃねぇよ。 元の西垣に戻った時の方が大変じゃねえか。
「物理的にも精神的にも拒否権は無い、か。 で? 頼みってなんだ?」
「聞き分けのいい奴は長生きするぜ? 多分な。」




