夕暮れ時の漁港
ショッピングセンターから離れて俺達は漁船が立ち並ぶ場所へと足を運んでいた。 まだ日は高いもののもうすぐ夕方になる。 戻る時間を考えても、そろそろ帰る方針を定めた方がいいだろう。 長居するわけでもないが、折角来たのに何も見ていかないのはもったいないので。
「やっぱりこっちの方が栄えてる感じがするな。」
先程行ったショッピングセンターよりは見映えがいい。 というよりも多分こっちが本質だろう。
「誰も近くにはいませんね。」
「漁師はほとんどが明朝に船を出すからかもな。 でも船舶している船の数はそこそこあるし、準備もとっくに終わってるんだろ。」
防波堤が無いのがちょっと気になるが、それなりに捕れるのかもしれない。
「あ、魚市場ですよ。 あれ、でも閉まってます。」
「朝の内に終ったんじゃないか? 魚介って鮮度が命だし。」
そんな風に歩いていると、不意に西垣が止まる。 そして船の止まっている波止場と沈みかけている太陽とオレンジになりつつある空を見ていた。
「私、ここに来て正解だったと思うんです。 こうして綺麗な空と海を見れているのですから。」
そんな後ろ姿を見て俺は、胸の奥から高鳴りがするのが分かった。
確かにこの光景はなかなか見れないと思う程に綺麗だった。 だがそれを差し引いても、そんな光景を見ている西垣の姿に目が離せなくなっていた。
例の夢の事がある都合なのか、西垣の事をクラスメイトとしてしか見れていなかった。
だからこそなのかより一層美しく見えるのかもしれない。 それほどまでに西垣の姿は俺の心のどこかで「1人の女子」として、そして「心惹かれていく存在」として無意識に思っている。
俺の安息のため、西垣が壊れないようにするため、一緒に過ごしてきたつもりだったのだが、たった1ヶ月でそれが覆ろうとしていた。
「そろそろ帰ろう西垣。」
だがそんな思いに更けるほど非常識な人間でもない。 自分の中で区切りをつけて西垣に話しかける。
「そうですね。 これ以上遅くなってしまっては、家族に心配をかけてしまいます。」
それは西垣も同じだったようで、俺達は漁村から来た道へと帰る。
「また来てみたいですね。」
「今度はこっちの方をメインで行くか?」
いつの間にか隣で歩きながら会話をしていたが、違和感なんて無かった。 そんな時に向こうからも人がやってきた。 あまり広くはない道で4、5人程が横に並んで歩いていたので、俺はぶつからないように半身を西垣の方に寄せて道幅を向こうに渡すように歩いた。 そうしてすれ違ったのだが
「おい、すれ違う相手に会釈も無しか。」
すれ違った相手に肩を掴まれた。




