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最初の作法

 ゴールデンウィークの合間の平日を乗り越えていよいよ西垣と博物館へと行く日になった。


 朝起きた時には気にするほどではなかったのだが、博物館への最寄り駅にたどり着いた今では柄にもなく気持ちが落ち着かなくなってきている。


「今日は博物館に行きたいって言った西垣に合わせているだけだ。 構図だけ形だけ俺達は決してそんな仲じゃない。」


 自分の中で暗示のようにそんな言葉を繰り返す。 この場合は意識をしてしまったら負けなのだ。


 そう、こうして誘われること自体はなんら不思議ではない。 高校生活を謳歌するのならば、男女でお出掛けするというのは良い1ページになることだろう。


 だかしかし。 その最初の相手が西垣ということを忘れてはいけない。 入学当初に高嶺の花のような扱いを受けている程その姿を魅了している。 そうでなくとも顔が整いすぎている西垣とのお出掛けともなれば、あれだけ誘いを断られていたクラスメイトからすれば生唾物だろう。 嫉妬だけは勘弁願いたいが。


「これも運命という贈り物なのか?」


 胃が軋みそうだ。 あの夢を見てから俺は西垣の事を「未来を回避するために観察している」というスタンスを取ろうとしていた事もあったのだろう。 だんだんと西垣との距離感にどぎまぎしてしまうのは、健全な一般男子高校生なら当然の気持ちだろう。


「とにかく西垣が来るまでに気持ちを整えておかないと。 自分のうっかりで西垣の機嫌を損ねるのは悪手だ。 まずは深呼吸だ。 ゆっくりと息を・・・」

「お待たせしました。 積和君。」


 息を整えようとしているところに、西垣の呼ぶ声がする。 走ってきたのか呼吸が乱れていて、顔も少し赤い。


 そしてなにより着ている服が前に姉さんに連れられて試着した服だった。 この時期にしては少し暑い気もするが、向こうもお洒落に気を遣ってきた、ということなのだろうか?


「俺も今来たところだから、そんなに慌てて来なくても良かったのに。」


 テンプレかもしれないが、とりあえず思った台詞を吐く。 そして息を整えた西垣が背筋を伸ばした。


 試着の時はあまり長い時間見ることはなかったが、こうしてみてみると羊の毛皮のモコモコ具合が髪色と相まって可愛らしさを際立たせているし、フリルスカートにしていることで軽さを強調しつつも大人な雰囲気も出ているように見える。


「似合ってるなぁ・・・」

「積和君?」

「あ、いや、すまん。 口に出た。」

「そう言うことでしたか。 勇気を出して買って良かったです。」

「うちの姉さんが強引で済まなかった。」

「いいんですよ。 それでは行きましょうか。」


 そうして俺達は博物館に向けて進む事にした。

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