付き合わされる休日
「出発するぞカズ。」
剣道部の応援が終わった次の日の朝。 朝食を食べ終えてのんびりとしようとした矢先、朝食の時点で既に身支度を済ませていた姉さんからそんなお誘い (?)をされた。 そしてこう言った場合は大体やることは決まっている。
「今度はどこに行くのさ?」
「今回は海側に行く。 電車と海のコントラストが最高に高まるところを探しに行く。」
そう、姉の趣味は撮り鉄。 ただ電車を撮るのではなくその風景に合わせた写真を撮り、それを眺めるのが姉さんにとっての癒しなのだとか。
「遠出をするので母さんには弁当を作ってもらった。 勿論カズの分も入っているぞ。」
「用意周到だなぁ。 俺行くって言ってないんだけど?」
「それでも文句を言わず着いてくる訳だから優しい弟だよ。 それにたまには目に見える光景を楽しむのも悪くはないだろう?」
俺だって気分が乗らない時はそっとしておいて欲しいと思うが、外に出なくても出来る俺を外に出させるのはある意味では姉の優しさなのだろう。
「・・・分かった。 でも数分待って。 着替えたいから。」
「私も急かすつもりはない。 行き先のプランは決まっているからな。」
そう言って姉さんは扉を閉め、俺は急いで着替え直すことにした。
「まだ海風が寒くない?」
「そうとも言えないぞカズ。 日に日に温かくなっているからか、他の人もいるではないか。」
俺達は海沿い行きの電車に揺られながら景色を見ている。 休日だからか大型連休だからかボチボチと言った具合に人は乗っていた。
そしてなにも言わずに降りた姉の後を追いホームで立ち止まる。 姉はすぐさま乗ってきた方向とは逆に向かっていき、そこで一眼レフを構える。
「それ誕生日に買ってもらった奴でしょ? そろそろ年期が入ってるんじゃない?」
「何を言うか弟よ。 こう言ったものには愛着というものが湧くのだ。 この一眼レフを手離す時は完全に使えなくなった時だけだ。」
「そこは死ぬまでじゃないのかよ。」
そう反論する俺を余所に向こうから現れた電車を激写していく。 色んな角度から写真を撮っているからか動きも激しい。 あれでもれっきとした生徒会の一員だと考えると、ギャップは凄まじい事になるだろう。 顔が残念にならないだけマシだと思えてしまう。
「まあ他人に見せる訳じゃないから良いんだろうけど。」
「よし、次の駅に向かうぞカズ。 少しずつ景色は変わり始めているから早めに行かなければな。」
そう言って姉さんはさっさかと次の電車に乗る。 今日も帰りが遅くなりそうだと思いつつも、嫌がらず付き合ってしまうのは、相手が姉だからかそれとも・・・
「そんなのは関係無いか。」
そうポツリと呟いて電車に乗るのだった。




