表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/224

労い

 試合が終わったので改めて控え室に向かうことにした俺達3人。


「落ち込むような奴ではないだろうけど、今後のエールとして声はかけてやろうぜ。」

「いやいや。 初戦で引き分けなら実力は十分じゃない? 向こうの相手先輩だったんだし。」

「本人としては悔やむところもあるかもしれません。」


 三者三様に言葉を述べながら俺達は先程案内された控え室に向かい、その扉を開けると


「凄いじゃないか! 今年のニューホープは期待を裏切らないな!」

「格上相手に引き分けとは大したものだ。 相手も驚いてると思うぞ。」


 そこには先輩達に熱烈な喜びを受けている芦原の姿があった。

「・・・俺達の労いいらないかもな。」

「また後にしましょうか。」


 その光景を目の当たりにして俺達は控え室の扉をそっと閉じたのだった。


「いやぁ、あれは旋風を巻き起こすかもねん。」


 結局先程の客席 (戻ったらそのままだった。)に座り、芦原の事を思う。


「同じ道術でも経験者は格が違うか。」

「そう言えばニッシーは柔道部だったよね。 大丈夫なのん?」

「私も幼い頃から習っているので・・・ニッシーって私の事・・・ですよね?」

「あだ名はあった方が親しみが湧くっしょ? ガッキーだとダブりそうだし。 うちの事もヒッキーって呼んでいいし。」

「それは響き的にどうなんだ?」

「ここにいたのか我が相棒(バディ)。」


 その声に振り返るとまだ剣道着姿の芦原がいた。


「おう芦原。 随分と好成績だったみたいじゃないか。」

「あまり先輩と同じことを言わないでくれ相棒(バディ)。 確かに相手は我よりも熟練していた。 故に先の試合の引き分け(ドロー)幸運(ラッキー)でしかないのだ。 実力ではないゆえ喜びを表せないのだ。」

「でも負けてはないっしょ?」


 やれやれと言った具合の芦原に引間がツッコミを入れる。 思うところはあったらしい。


「ビギナーズラックだって自分の実力っしょ。 負けて得られる知識もあるけど、一本は取ったんだからそれを喜ぼうぜ。 素人目で見ても強いって証明されたならそれでよくない?」


 引間の言い分は軽いが、ここで気分を落ち込まれても仕方がない。 そんな想いが届いたのか、芦原も気持ちを切り替えたようだ。


「・・・どうやら期待を裏切らぬために肩に力が入りすぎていたようだ。 礼を言おう知識の女神(メーティス)。 貴殿のお陰で目が覚めた。」

「うちはなにもしてないって。 それよりメーティスは大袈裟じゃない? うちには荷が重すぎるって。」

「いいんじゃないか引間。 感謝はしてるんだからさ。 それよりも他の試合の方はいいのか?」

「心配は無用だ。 そもそも今回のは地域対抗。 いわば御前試合だ。 互いの実力を見るだけの試合だ。 それにもう我の出番はない。 ここからは応援(エール)を送る番になるわけだ。」


 そうして残りの時間で先輩の応援を目一杯するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ