仲間意識は部活かオタクか
今日も今日とて弓道部での基礎練習をこなし、腕がもう上がらないんじゃないかと思うぐらいにはゴム弓を引いた。
その分早く終わったのはある意味では筋力トレーニングの一環なのかもしれない。
「やあやあ積和君。 今日はこのままお帰りですかな?」
そんな風に思考を巡らせていたら後ろから引間に肩を叩かれる。
「いっ・・・まだ痛いんだから止めてくれよ。」
「案外ヒョロガリなんやね。」
「うるせ。 そっちだって腕立て伏せとかほとんど肘が曲がって無かったじゃんか。 あんなの筋トレにはならんぞ。」
「女子には女子なりのやり方があるんよ。 それはそうとちょっと買い物に付き合っては貰えませんかな?」
「買い物ってなに買うのさ?」
「まぁ色々と。 つうわけで雑貨店にレッツゴー。」
別に許可したわけではないのだがもう既に行く気満々になっている引間の後ろを、半ば強引についていく形になっていた。
雑貨店につき、最初に引間が手に取ったのはハンドクリームだった。 ちなみにここに来るまでに引間は髪を結び直し、眼鏡をかけた文学少女の見た目に変貌していた。
「このくらいの保湿がいいかな。」
「引間さんハンドクリームなんて買うんだ?」
「部活で手が痛くなるから、保湿力が高いのが欲しいんです。」
先程までの引間とは違い、発言とかも控え目だ。 良く擬態していると思いつつも、やはり気になるところは気になったので聞いてみる。
「・・・なぁ。 なんでわざわざその格好と喋り方にしてるんだ?」
「顔見知りに会ったら気まずいし、それで離れられても困るから、と言った具合でしょうか。」
理にかなってるな。 俺もそれに合わせる形で喋ってしまったが、幸いにも今は見られても困る人物はいないようなので、そのまま買い物を続ける。 近くにいすぎるのもあれかと感じ、俺は少し離れた所で目に止まった握力を鍛えるハンドグリップを手に取る。
勿論雑貨店仕様なのでそこまで硬くはない。 一応目に止まったのでどのようなものかと確認した程度だったが、やはりスポーツ用品店に売られているような物の方が余程効くだろう。
他にはなにか無いかと周りを見ていると、引間がハンドクリームその他諸々を購入をしたのを確認して、少し時間を置いてから出ていく事にした。 すると引間が出口で待っていた。
「別に帰ってもよかったのに。」
「おやおや。 夜道を女子1人で歩かせようとは、随分と薄情じゃない?」
既に仮面を取り終えていた引間にそう諭されればぐうの音も出なかった。
「分かったよ。 言っとくけど違う方向になった時点でお別れだからな。」
「分かってるよん。 それじゃあ行こうか。 色々とお話もしてみたいし。」
「それは部員として? それとも同胞として?」
「どっちに捉えてもいいよん。」
考えが読めない引間に俺はもうどっちでも良いかと思いながら帰り道を歩いた。




