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西垣との約束

「初陣ねぇ・・・」


 昼休みに入りいつもの場所でとりあえず1人そんなことを呟いた。


 芦原がそれだけ実力があると言うことの証明はされたのだろう。 認められると言うことはかなり凄いことだと認識している。


「俺が表舞台に立つのは、少なくとも秋になりそうだな。」

「どのような舞台に立つのですか?」


 そんな独り言に西垣が質問する。 流石に何度も来ているのでもう驚きはしない。 むしろ先週の西垣の様子を見ると、多分こう言った場面を作った方が話しやすいのかもしれない。 クラスメイトからの質問や誘いがようやく落ち着いてきた辺りなのだが、どうやらこの場所の方がいいらしい。


「芦原がな、次の週末に先輩達と剣道の大会に出るらしいんだってよ。」

「それは凄いですね。 まだ1ヶ月も経っていないのにもうレギュラー入りなんて。」

「地域対抗みたいだからそこまではでかくないらしい。 相手が先輩だから勝てるかどうか分からないってよ。」

「それでも凄いと思いますよ。 応援をしに行くのですか?」

「まあ誘われたからな。」


 行く予定でもなければ剣道は必要最低限のルールしか知らないが、友人として誘われた以上は応援はしてやらないとと思ったのだ。


「ゴールデンウィークの始まりにしては丁度良いかも。」

「・・・あの・・・」


 不意に西垣が俺を呼ぶように声をかけてくる。 その表情はどこか申し訳なさそうな雰囲気を出していた。


「その・・・このような聞き方は、失礼だと思うのですが・・・積和君はゴールデンウィークにご予定はない、ということで良いのでしょうか?」


 確かに質問自体はかなり失礼ではあるだろう。 ただそんな風に言う西垣の様子は小動物かのように震えていた。


「まあ特にはないかな。 出掛ける用事も理由もないし。」

「それでしたら!」


 そう答えると西垣は意を決したように俺の方に向き合う。 様々な表情を見せる西垣に俺は目が離せなくなる。


「5月の始めのお休みに、どこかに行きませんか? 折角のゴールデンウィーク、なので・・・」


 そして言いきった西垣は力が抜けていくようにベンチに座っていった。 まさかの女子からの誘い。 西垣のことを深く知らなければ多分周りの目を気にせずに喜び回ることだろう。 実際他の男子が同じようなことをされたらしてる気がする。


 だが俺は西垣のもう1つの人格のことを知っている。 休みの間は目が届かない。 ならばせめて会える機会をと思っていたので、ある意味では願ったり叶ったりでもある。 喜びと使命感で気持ちが複雑化しているが、今は男子高校生らしくいこう。


「分かった。 また詳しい場所とかは別途決めていこう。 教室だと色々と目立ちそうだし。」

「・・・! そう、ですね!」


 去年とは違うゴールデンウィークの過ごし方。 面倒なことにならないことを、今から心配してしまう俺だった。

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