デジャヴ
入学してそろそろ1ヶ月に差し掛かろうかと思われる時期になり、授業内容も着々と難しくなってきている。
朝の方の授業は内容を飲み込ませるためにやけに脳が冴えるのだが、昼を越えると弁当の満腹感と春の陽気に当てられて眠たさを誘発してくるためやや危ない。 「春眠暁を覚えず」とはよく言ったものだとその日も眠気に耐えながら授業を受けていた。
そして放課後になり、既に1/4となった新入部員を交えた弓道部も、なんだか何時にも増してゆったりとやっていた。
先輩方の話では先の大会は最低でも夏前な上、競技内容としては基本的に的当て。 そこに集中するだけなので、普段の練習は必要最低限でいい、とは臼石先輩談である。
そして俺達新入部員組もその流れに任せる訳でもなく、ただひたすらに基礎練習をしていた。
そんな中で新しく取り入れられたのは「ゴム引き」と呼ばれるものだ。 しかもただのゴムを引っ張るのではない。 普段の輪ゴムの何十倍も太いゴムを、握るだけで手のひらを痛めそうな木製の棒を持って引っ張ると言うものだった。
「ふぐぐぐ・・・」
「最初はキツいかもしれないが、これがしっかりと引けるようにならなければ、本物の弓を引くことは出来ないからな。」
指導して貰っている先輩の言う通り、これは本物に近い形にしてあるため、これが引けないとなれば矢面には立てない。 女子の方も男子よりは軽量化されているものの、やはり一筋縄で引けるものではない。 実際引くだけでも腕が痛いのだが、ある程度の距離まで引っ張ってその体型を数秒間維持しなければならないという練習のため、やり終わった後は腕がまともに上がらない。
苦を強いられつつもトレーニングの一環なので文句は言わない。 だがこれだけのことをしても本番のように立つのはしばらくは先になるだろう。
そんな思いで部活動を終えた俺は、疲れながらも自分の鞄からウォークマンを取り出す。 ポケットに入れない理由は学校では使わないからと言うことと落とすのが嫌だからだ。 単純な理由だ。
イヤホンをセットして聴きたい音楽を流す。 外に音が漏れてないことを確認してから耳に付ける。
今日は弓道部が早く終わったため西垣や芦原の姿はない。 寂しさを感じないことはないが、こう言った1人の時間も時には大事だと思っている。
「~♪︎~♪︎♪︎~♪︎~」
流れてくるのは自分が口ずさんでしまう程に好きな曲。 この曲を聴いていると自分の中にあるなにかを全て流して研ぎ澄ましてくれる。 原曲も勿論好きだがソシャゲ版のアレンジもなかなか良かった。 それほどまでに俺を魅了した曲それが
「「落ち行くは甘い表層のるつぼ」。」
第3者の声に遮られ、この感じに既視感があるなと思いつつ、イヤホンを外して振り返ると、そこにいたのは文学少女のような見た目の女子だった。




