心情
明らかに西垣の口調が変わったことに驚きつつも、一度遭遇しているので気持ちを落ち着かせてソイツに向き合う。
「あの時は出るのを我慢してたのか?」
「冗談言うな。 手を掴まれた瞬間に出たかったが、あの程度じゃ別にそこまで気にならんかったらしい。」
だが今になって出てきたと言うことは、それだけの嫌悪感があったと言うこと。
「気持ちに遅効性なんて無いだろ。 なにがきっかけだ。」
「さてな。 オレはもう1つの人格だが、記憶や感情を共有してる訳じゃねぇ。 その辺りは自分で考えな。」
「そうか。 とりあえず元の西垣さんに戻ってくれ。 お前のまま戻るわけにはいかんからな。」
「折角出れたんだが・・・まあいいだろう。 だが次に現れた時は・・・お前にもそれ相応の対応はして貰うぜ?」
そう言ってニヤリと笑った後に項垂れて、すぐに顔を上げた西垣の表情は先程のような恐怖を与えるようなものでは無くなっていた。
「あれ・・・私・・・」
「災難だったな西垣。」
変に悟らせず尚且つ気遣いをして、少しでも出来事を霧散させようと西垣に声をかける。
「あ、そう言えば声をかけられたのでしたね。 でも大丈夫ですよ。 記憶はありませんが。」
西垣も先程の事を思い出したようだが、特に何も気にする様子はなかった。
「ああ言った人たちは慣れてますし、ギャフンと言わせるために私・・・あ、や、やっぱりなんでもないです!」
そう言って西垣が力こぶを少し作った辺りで、我に返った様に両手をブンブンと振る。 その光必死になにかを隠そうとする光景を見て、微笑ましいと思ったのは黙っていた方がいいだろう。
しかしそうなってくると西垣のもう1つの人格が現れた理由が不鮮明になってくる。 奴が出てくるのは西垣の嫌悪感によるもの。 西垣の気持ちのパラメータ次第で出てくるものだと思っていたが、先程の西垣の様子を見るに、多分最終的には物理的に解決できたかもしれない。 柔道だってやってるし。
つまりただナンパをされただけでは条件にならなかったと言う事になる。 前の時のようにクラスの女子に無理矢理誘われたり俺に胸を触られたりと言ったような状況では出られないらしい。
「積和君?」
そんな長考をしていたせいか、西垣に心配をさせたようだった。
「ああっとすまん。 そろそろ戻ろうぜ。 もう買い物も済んでるだろうし。」
そう言って西垣と家族のもとへ戻り、ようやっとショッピングセンターから帰宅することになった。 勿論西垣も一緒だ。 家まで送ると言ったのだが、西垣がそこまでして貰うのは申し訳無いと、道すがらで降りることになった。
そして西垣が大丈夫と言った場所で降ろす。
「じゃあな西垣。」
「はい。 また学校で。」
そうして西垣が小さくなっていくのを見送りながら、俺達も家へと帰るのだった。
これはターニングポイントへの布石として・・・




