家族と西垣
「カズ、買い物行くわよ。」
土曜日の朝早くから母さんの呼び掛けが聞こえた。 時刻は午前7時半。 朝食を食べていないこの時間に声をかける理由は、喫茶店で朝食を取るからだ。
「今日はどこまで?」
「いつものショッピングセンターよ。 フミも出掛ける用意をさせて。 あの近くの喫茶店は混みやすいから。」
自分が行くよりも着替えが早い俺に役割を渡す母さんの声に応え、姉さんの部屋に向かう。 姉さんの部屋の前に立ってドアをノックしようとする前にドアが開いて、中から既に着替え終わっている姉さんの姿があった。
「聞こえてたわよ。 この家は案外声が響くからね。 私の事は良いからカズも着替えてきなさい。」
完全に二度手間じゃないか。 溜め息混じりに俺は部屋に戻り部屋着から出掛ける為の服に着替える。 そしてガレージで待っていた家族と共に出発するのだった。
「ははは。 それは大変だったな。」
「父さん笑い事じゃないから。 全く、早く着替えなきゃいけなかったのはどっちだって話だよ。」
笑う父に反論をするが、こちらとしてはとばっちりにも程があるのだから笑わないで欲しい。
車に揺られること10分程。 最初の目的地である喫茶店に到着した。 全国展開しているチェーン店なだけあって、この時間でも満席御礼のようだ。
「いらっしゃいませ。 只今席が空きましたので、少々お待ちください。」
自分達の入店と前のお客の退室が重なったようで、席を片付けている様子を確認してから席に座る。
「丁度空いて良かったわね。」
「長い時は20分は待たされるから、存外運が良かったのね。 」
「みんな注文はいつものでいいかな?」
父さんの言葉に全員頷いて、みんなの注文をまとめて取る。 後は注文を待っているだけになったので、適当に入り口近くをボーッと眺めていると、早速誰かが入店してきた。
その人物は綺麗な銀色の髪を揺らしながら店に入ってきて・・・というかあれって・・・
「・・・西垣?」
「うん? カズの知り合いかい?」
ポツリと呟いたはずなのに隣にいた父さんには聞こえていたようで、母さんも姉さんもその入ってきた人物を見た。
「あら、随分と綺麗な娘じゃない。」
「1人で困っているようだから連れてきたらどうだい?」
「それ向こうも困らない?」
「1人で喫茶店にいるよりはこっちの方がいいでしょ。 いいから行ってきなさい。」
母さんと姉さんに唆されて俺は席を立ち、入り口近くに歩いていき、店員に説明する。
「あれ? 積和君?」
「すみません。 彼女、連れなんですけど、一緒の席にしても良いですか?」
「かしこまりました。 それでは5名様とさせていただきますね。」
そう言って店員が注文を取りに行ったのを確認してから西垣を席に案内することにした。




