体育での西垣
学校へ行く中で唯一俺が気分を落とす事がある。 それは体育の時間。 あまり運動が得意ではない俺にとってはやや気が重たくなる。
完全に嫌いなのではないが、他と比べればやはり見劣りしてしまう部分も無くはない。 部活だって運動部に入る予定は無かったのだから。
「本日は体力テストが控えているため、そちらの練習を行う。 今回は外で行う課題の練習だ。 一度きりの種目は用意していない。 あとは各自で練習するように。 では解散!」
体育教師の言葉でクラスメイトが散り散りになる。 俺が足を運んだのは砲丸投げだ。
「・・・うおっ。 結構重たいな・・・」
試しに地面に置かれていた鉄球を持つと腕がグッと持っていかれるように重いと感じた。 持ち上げられないことは無いのが救いではあるが、10分と持っている自信は無い。
「砲丸投げについてはルールが細かい。 例えば円の中から越えて投球してはいけない、測定し終わるまで離れないなどがあるが、最も重要なルールは投げる時の構え方だ。」
体育教師がこちらに向かってきてから説明に入る。 俺の他にも数名いたので、ついでに教えるつもりだろう。
「鉄球を投げる時の構えは野球のような後ろから前へ投げるのではなく、肘を曲げ鉄球を顔の横まで近付け、斜め上に向けて投げるのが一般的だ。 空に向かって投げるイメージをすればいいだろう。」
そう言って教師は離れていった。 そして言われた通りに遠投を始める。 結構重たいから投げるために後ろにのけぞる様に体を動かす。 鉄球の重さがバランスを崩そうとするが、なんとか耐えて投げてみる。 鉄球は空中で弧を描いたが、なかなか前には飛ばなかった。
「やっぱり筋力なのかなぁ・・・?」
力こぶを作ろうと思っても作れるわけもなく、仕方なく砲丸投げを離れて高跳びの方に行ってみる。 そこでは女子が数名集まり練習をしていた。 その中に西垣の姿もあった。
西垣が跳ぶ番になり助走をつけて背面飛びを行う。 その姿につい見惚れてしまい、目が釘付けになってしまった。
「跳ぶ姿が美しい。 あれぞ正しく女神の貫禄。 そう思っているのではないか? 相棒。」
いつの間にか後ろにいた芦原に声をかけられてハッと我に返る。
「恥じることはない。 本当に美しい物を見た時は、誰しもが魅了されるもの。 強いて言えば同じ様に見惚れているのは相棒だけではない、ということだよ。」
「・・・そうかよ。」
少しだけ恥じらいを持ちながら、体育の授業を終えるのだった。




