弓道とは
「弓道部はその名の通り弓を引くことに趣を置く部活動。 そこに並んでいる弓がその証拠だ。」
立て掛けられている弓を見ながら俺は先輩達の話を聞く。
「そして弓道にも「型」が存在する。 この「型」というのは流派などではなく、弓を正しく射つ為の動作と思ってもらいたい。」
「動作。」
「弓だってただ矢を引けば飛んでいくものではないんだ。 それ相応にしっかりとした姿で射たなければ、弓は的には当たらないのさ。」
2人の先輩から諭されるかのように説明を受けている。 だがさっきの先輩の姿を見れば、納得しか無かった。
「剣道や柔道には「技」があるが、弓道にはそれはない。 何故かと問われれば必要がないからだ。 弓道は的を射つ事だけに全身全霊をかける。 それだけで十分だからだ。」
「弓道って向かい合う対戦相手がいないからね。 そうなってくると、競う相手は己自身にしか無いって事だよ。」
左と右で説明に温度差が生まれているからか、弓道に対するそれぞれの異なったイメージが頭の中を行き来している。 左の女子の先輩は熱血と冷徹さ、右の男子の先輩は気抜けする緩い感じと言った具合に。
「おい。 これから入部する可能性のある新入生に、そのような雲の中にいるかのような雰囲気で説明をするんじゃない。」
「まあまあ。 気負い過ぎても良くないですって。 真剣さにも時には息抜きも必要ですよ。」
「そう言うことを言っているのではない! 大体去年お前が入部してから弓道部が緩くなってきている! もっと気持ちをしっかりと持て!」
「何事もバランスですよ。 弓道に大切なのは精神の統率。 気を張っていようが緩めていようが、平常心が保てていればそれで良いではないですか。」
俺の目の前で喧嘩のような意見のぶつかり合いを見て、止めるべきかどうかを考えていたら、女子の先輩が咳払いをして話を戻す。
「ともかく! 我々2人の説明を聞いて興味を持たれたのなら、是非とも弓道部に入部してもらいたい。」
「入部は大歓迎だからねぇ。」
そうして説明を受けて弓道部を後にした俺は、もう1つの部活に行ってみようと思っていたのだが、柔道部の所に西垣がいるのを確認して、まだ説明を受けていたので、少し外で待つことにした。
「む? 相棒ではないか。 鍛練の見学に来ていたのか?」
そうしたら芦原の方がやってきた。 そう言えばここって剣道部と柔道部が同時に使ってるんだっけ。
「見学しに来たのは間違いないが、剣道の方じゃないかな。」
「それは残念だ。 我が剣技を見る機会であったのに。」
「そのうちに観に行くよ。」
「あれ? 積和君?」
芦原と話していると、こちらも見学が終わったようで、西垣がすぐに俺に声をかけた。
「これから帰られるのですか?」
「ああ。 西垣が良ければ一緒に帰れるかなって思ってさ。 方角も一緒だし。」
「そう、ですか? そう言うことなら・・・」
「我は邪魔か?」
「そんなことないって。 一緒に帰るか。」
そうして俺たち3人は校門を抜けるのだった。




