最初にするのは
その髪や顔立ちから目が離せなかったが、俺はすぐに我に返り、向こうがこちらに気が付く前に俺はその場を去り、自分のクラスとなる場所へと移動する。
これは自分が声をかけられなかったからではない。 むしろ夢とは言えあんな結末を見ていることもあり、どういう心境で接すればいいか分からなくなり、一旦距離を置こうと思ったのだ。 決して、そう決してへたれたからではない。 確かに中学の時に女子と対して仲良くなった訳ではないが、完全に喋られなかった訳ではない。 そう、人付き合いとは互いの距離感を理解することが何よりも大事なのだ。 うん。
1人で勝手にそれっぽい言い訳を脳内再生しつつ教室に着いて、自分のネームプレートのある席に着く。 既に教室には何人かいたのだが特に声をかける気にはならなかった。 知り合いでもなんでもないし。
そうして少しずつ教室が埋め尽くされていく。 入学式は後15分程で始まるが、そろそろクラス全員が揃うところだろう。
「・・・まぁ同じクラスになる可能性もあったにはあったのかもね。」
必ずなんてものはない。 クラスメイトじゃないからと言って仲良くならないわけでもないだろうし、何らかのきっかけがあるんだろうなと思っていた時に、
その少女は入ってきた。 その髪の色や顔立ちの良さからクラスの注目の的になっているのは得て当然だった。
「・・・こんな陰謀的な運命ある?」
あの夢が避けられない運命にあるとするならばなんとしても起こっては行けないことだ。 その中に自分がいるのも真っ平御免だ。
そして入学式も何だかんだで流れていき、もう一度教室に戻ってくれば、自分達が座っていた机の上に1枚の紙が置かれていた。 そしてその次に入ってきたのは若い男性教師。 恐らくは担任だろう。
「自分達の机に置かれている紙は明日皆さんが自己紹介するために必要な紙になります。 そちらを本日は持ち帰り、自己紹介文を書いてきてください。 申し遅れました。 このクラスの担任を務めます外山と言います。 本日から1年間、皆さんと過ごしていくことを心より楽しみにしています。 明日からは教科書などをお配り致しますので、こちらでも用意致しますが、大きめの鞄などを持ってきてください。 本日はここまでとします。」
挨拶もそこそこに本来ならそのまま帰れる筈なのだが、クラスの大半はその銀色の髪の少女のもとに集まり、思い思いに話を進めようとしていた。
もちろんここで話しておくことできっかけを作るフラグにはなる。 だが俺は敢えてしないことにした。 理由はあの夢の事。 今すぐに起きないにしてもあそこまで鮮明で尚且つ夢から現れたかのように本人がいるのならば、正夢になる可能性が本当に出てきたということになる。
もちろん自分に未来予知何て言う能力がないのは百も承知。 だが関わったことであんな未来が訪れるのならば、それは勘弁ならないからだ。 俺はただの一般人として平穏に生きられればそれでいい。
囲まれている彼女を余所に、俺はそのまま教室を去って家族の元に戻る事にした。