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西垣は語る

「それって具体的にどう怪我をしてるんだ?」


 かなり物騒な状況から始まりそうだったので俺は聞いてみることにした。


「殴られた人が横たわっている、と言った方が良いのでしょうか。 その中で私だけが立っているんです。」

「その状況になった時の事は?」

「・・・正直覚えてないんです。 ものの数分の事なのにその部分だけ抜け落ちていると言うか・・・」


 つまり見たことや自分の取った行動についての記憶は共存してないことになるな。 二重人格ならあり得ない話じゃない。


「じゃあさっきの事も?」

「そう・・・ですね。 倒れそうになったところを積和君が支えて・・・胸を・・・触られて・・・そこから記憶が・・・」


 つまりそこがトリガーになったってことになる。 そりゃ別に好きでもない男子に胸を触られたりしたら不快にもなるだろう。 下がっていく頭を見ながらそう思った。 髪の隙間から覗いた顔は赤くなっている。


「それに関してはこっちも悪いから西垣の方が正しい。」


 変に落ち込まれても困るので宥めることを優先する。 そして本質を聞こうと思っている。


「その記憶が飛ぶのは、両親は知っているのか?」


 そう言うと西垣は首を横に振った。 どうやら話してはいないらしい。 どんな理由があるにしろ、やはり1人で抱え込むのは荷が重すぎる気がする。


「なぁ西垣。 もし西垣の中にもう1人、違う誰かがいるって言ったら、信じるか?」

「・・・信じたくは、無いです・・・でも、もしかしたらって思うと・・・」


 なるほど。 自分に自信が持てなくなってきている訳か。 そういうことなら都合がいいかもしれない。


「大丈夫だ西垣。 今気が付けているなら手はあるさ。 信じて欲しいとは言わないが、なにかあったら相談には乗るぜ。 1人で抱え込むよりも誰かに打ち明けた方がいいだろ?」


 そう西垣に言うが、恐らくもう1人の西垣は鼻で笑っていることだろう。 「そんなもので解決出来るのか?」と言った具合に。 だが理解しあうことは大事だと思う。 少なくとも俺はそんな人物を知っているのだから。


「そう、ですね。 分かりました。 困った時は、積和君を頼りにしても良いですか?」


 あまり頼られ過ぎるのも困るが、ここで否定するのは流石に違う。


「いいぜ。 こっちも出来る限りはサポートする。 その前にまずは友人作りからかもな。 西垣ってハーフだからかちょっとお高く見られてるんだよな。 何て言うか、昔あったじゃん? 高嶺の花って奴。」

「確かに良くありますよね。 クラスのマドンナと呼ばれる存在と。」


 西垣と話す上で大事なことはとにかく嫌な思いをさせないことだ。 そして今の西垣には理解者を多くする必要があるだろう。 その辺りもどうしていくか考えながら西垣とお昼を過ごした。

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