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ここに来た理由

 円盤の回るアトラクションを終えた俺達は、小休止も兼ねてベンチに座っていた。 アトラクションに乗ること自体はちょっとハイペースではないかと思いつつも、休日以上にアトラクションに乗れるのならばかなり大きいので、ハイペースだろうが、選んで乗ればいい。


「叫んでた訳じゃないが喉は渇くものだよな。」

「夏でなくても水分は飛びますからね。」


 西垣も同じことを思ったようで、ペットボトル片手にそんな風に話す。


「次はなににする? 個人的には出来れば一度絶叫系はやめて貰いたいものだが。」

「それなら・・・あれとかどうですか?」


 そこはメリーゴーランドだった。 俺達は馬車のようなものに乗っていた。


「これ良くできてるよな。 上下させるのに柱と絶妙な隙間を作っているんだもんな。 メリーゴーランドも馬鹿には出来ないな。」

「そんな風に見ているのは積和君だけですよ。」


 そうなのだろうが実際に感動しているのだから仕方ない。 そう言ってメリーゴーランドを楽しんでアトラクションを降りた。


「積和君、次はどちらに・・・」

「ちょっと待て西垣。 雲行きがちょっと怪しいぞ。」


 空を見れば、明るかったはずの空が雲に覆われ始めていた。


「おかしいですね? 今日は晴れだと聞いていたのですが。」

「天気予報だって外れる時はあるさ。 屋根のある場所って何処だっけ。」

「ええっと、あちら側ですね。」


 指差したのはこれから雲に覆われそうな空の方角だった。


「よりによって、か。」

「どうしましょう? ここで待機しますか?」

「いや、多少濡れても中に入れば問題ないだろ。 西垣、走れるか?」

「靴は・・・問題ありません。」

「よし、遅くなると濡れる時間が長くなる。 行こう。」


 そうして俺達は屋根のある場所目指して走った。


 結果的に言えば入る直前で雨に打たれたが、なんとか事なきを得た感じだ。


「これどうだろうなぁ。 通り雨だから雨自体は問題ないだろうが、アトラクション的にはかなり絞られるかもな。」

「そうかもしれませんね。 ・・・フフッ。」


 俺のちょっとした心配を余所に、西垣は声を潜めて笑っていた。


「こうなってしまったのも、思い出と言えば思い出ですかね?」

「お出掛けの途中で雨に降られたことがか?」

「これがお友達となら「ああ、残念。」とか「なんでこんな日に限って・・・」と、悲しみや怒りがあったと思うんです。 実際に私も本当は雨が降るなんて、と思っていますし。」

「そりゃそうだろ。 天気予報は晴れだったんだからな。」

「でも」


 そう言って西垣は俺の方に向き直る。


「この場所に来た理由は「積和君と遊園地に行ってみたい」という想いからです。 だからこう言ったハプニングも、1つの思い出だと思うのです。」


 そう微笑む西垣に、少しだけ濡れている銀髪も相まって美しく見えた。 今日ここに来たのは西垣が遊びたかったからではなく、俺との思い出として来ていると思ったら、胸の奥が熱くなってくる。


 そして確信する。 俺は西垣の事が本当に好きなのだと。 自覚をしてしまったら、恐らくは戻れないだろうと言う気持ちだった。


「あ、積和君。 雨、上がったみたいですよ。」


 その窓から覗いた空は、ゆっくりと明るさを取り戻していたのだった。

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