アクティブ西垣
「積和君。 折角なので写真を撮りませんか?」
そう言って西垣は目の前の入園記念のパネルを指差す。
「いいぜ。 西垣側に立ちなよ。 写真を撮ってやるから。」
「なに言ってるんですか。 積和君も一緒に撮るんですよ。」
そうなるよな。 あんまり撮られるのは好きではないが、思い出と言う意味合いならば撮られるのは構わない。
「あ、すみません。 写真をお願いしてもいいですか?」
「いいですよ。」
「お願いします。」
そう言って近くを歩いていた女性にスマホを渡して看板の前に西垣と共に立つ。
「はーい。 2人とももう少し近付いてー。」
「えっ?」
俺が呆気に取られている内に、西垣の方が俺に寄ってくる。 その瞬間を写真に納められる。
「どうぞ。 彼女さんと楽しんでくださいね。」
どこか暖かい目で俺達は見送られ、俺は困惑していた。 西垣は彼女ではない。 あくまでもクラスメイト。 友人にしか過ぎない。 だがあそこでキッパリと「違います」とも言えない。 複雑な立ち位置にいた。
「積和君。 そろそろ行きましょう。」
俺が困惑したまま立っていたので、西垣の方から歩み寄ってきた。 過ぎ去ったことはしょうがないと思いつつ、俺は頭を切り替える。
「あ、ああ。 そうだな。 どこから回る?」
「あれに行きたいです。」
そう言って指差したのはコーヒーカップ。 チョイスは西垣らしいと感じながらコーヒーカップへと足を運んだ。
「このアトラクションの名前がコーヒーカップとなっていますが、ティーカップもあるんですよね。」
「あくまでもアトラクションの名称だからな。 飲み物が飲める形状ならなんでもいいんだろ。 場所によっては湯呑みもあるんじゃね?」
「湯呑みは流石に風情が無いような・・・」
俺もそう思う。 そんな感じで少し遠目のティーカップを選択してそこに乗る。 始まりの合図を待つのみだ。
「それではコーヒーカップ、楽しんで下さい。」
そうして俺達の乗っているカップよりも更に下の台が回り始める。
「わわっ。 結構回るんですね。」
「そうだな。 んで、この真ん中のを回すと・・・」
西垣が下を見ている間に俺が真ん中の台を回していく。 回すと言っても一定方向に力を入れるだけで、今乗っているティーカップが回るだけなのだ。
「わぁ、速度がのってきましたね。」
「西垣も回してみるか?」
「それでは僭越ながら・・・」
僭越ってそんな時に使う言葉だったか? そう思いながら西垣が回す様子を見ている。 カップはドンドン加速して回る。 これだけ回しても飛ばないのは遠心力の力だとかなんだとかなにかでやってた気がする・・・
「に、西垣?」
「まだ回せますかね? まだ速くなりますかね?」
あれ? もしかして西垣、今ちょっとハイテンションになってる? そんな考えを余所にまだまだ加速していく。
そして限界まで回し終えた辺りでアトラクションも終わりを向かえ、徐々に速度が落ちていく。
「ありがとうございました。」
アナウンスは聞こえてはいたが、あれだけの速度で回されていたので、足元がフラフラになっていた。
「た、大丈夫ですか?」
「ああ。 歩いている内に治るだろ。」
そう言いながら俺は心のどこかで、西垣に乗り物を任せる時は気を付けようと誓った。




