フォークダンス
「んで、フォークダンスってなんだ?」
「まずはその脊髄反射で動く癖何とかしなきゃいかんな。」
というよりもフォークダンスを知らないところから始まるのかよ。 こっちもどう説明すればいいか分からないので、近くで踊っている人達を見て貰うことにした。
「あんな感じに音楽に合わせながら踊るんだ。 踊るというよりは一緒になって歩く感じだと思えばいい。」
「ふーん。 あれのなにが楽しいんだろうな。」
「言ってやるなっての。 んで、フォークダンス、やるんだろ? 一応言っておくが俺もほとんど出来ないからな。」
「分かってるって。 あたいだって同じだからよ。 ほら、やってみようぜ。」
そう言いながら音楽に合わせて周りと同じ動きをしてみる。
「なんか、一緒に歩くのって、むず痒いな。」
「2人同時に合わせなきゃいけなかったりするからな。 ほら、ここで動きを止めて。」
そうして音楽に区切りがついて、帆山とお別れの挨拶を交わす。
「・・・ぷっ。 なんか変な感じだな。」
「だろうな。 これで満足か?」
「おう。 ちょっと別のところに行ってくるぜ。」
そう言って帆山はどこかの女子のグループに入っていった。 どうやらクラスメイトと少しずつ馴染み始めているようだ。
「あの様子なら親離れならぬ俺離れが出来るだろうな。 嬉しくは思うが、ちょっと寂しく感じるような・・・」
「なにが寂しく感じるのですか?」
いきなり現れた声に振り返れば、そこには笑顔の西垣がいた。 笑顔のはずなのだが、キャンプファイアの影もあってか物凄く怖く見える。
「積和君。 あの方になんの抵抗もなく連れられて行かれましたよね?」
「いや、別に抵抗する意味は無かったって言うか・・・」
「それにフォークダンスもあの人と踊っていましたよね? 私とはまだ踊っていないのに。」
「じゅ、順番は関係無くないか?」
「私は今物凄く機嫌を悪くしています。 どういうことか、理解していますよね?」
言葉を詰まらせる俺。 ここでエムゼになられるのは正直あまりよろしくない。 後ろから芦原達も来ている。 ここで変わればどうみられるか分かったものではない。 分かっていたことではあるが、ここで取れる行動はもう1つしかないのだ。 後にも先にもいけない現実が突き付けられる。
「・・・それなら西垣も踊るか? 俺と一緒に。」
「もう少し言葉は選んで欲しかったです。」
ぐうの音も出ない。 とはいえそんな俺を見かねたのか俺の手を取って、一緒にフォークダンスをする西垣。 西垣もまだぎこちないものの、さっきよりはましかなと思う躍りを出来ていた気がする。 気が付けばその後方では芦原と引間も一緒に踊っていた。
「これってもっと大人数でやって、他の人と交流を深めようっていうのが目的だったようなそうじゃないような。」
「今は気にすることではありませんよ? それに他の事に気を取られていると、足を取られてしまいますから。」
ちょっとだけわざとらしく足を動かした西垣に、危なげなく足取りを合わせる。
「いい思い出は出来たか?」
「先程の事が無ければ・・・ですかね。」
帆山のなにが気に入らないのか分からないが、バチバチに見合うのだけは個人的には止めて欲しいと思いたい。 そんなこんなで音楽も止まり、キャンプファイアも小さくなっていったので、それぞれで解散して文化祭は終わりを向かえた。 俺達も正門を出て歩き、そして西垣と別れを告げる。
「じゃあな西垣。」
「また来週よろしくお願いしますね。」
別れの挨拶をしてそれぞれ自分達の帰路に進んだ。




