何もない1日
看板を持ち歩きながら校内を見回っていたが、これと言って問題行動を起こす輩は見なかった。
「まあ、同じ校内の生徒だから、そんなことをする方が目に止まるか。」
危ないと言われているのは校外から来る人間なのだ。 そこまで私有混合はしていないだろう。
そして宣伝をしているうちに夕方になってくる。 1日目としてはこれにて終了となる。
「何事もなくて良かった・・・」
「どうして相棒が安堵しているのだ?」
教室に戻ってきた俺に芦原が聞いてくる。 言われてみれば俺は見回りの人でもなければ生徒会でもない。 なんで個人的な心配をしているのか分からなかった。
「しかし安堵するのはまだ早いぞ相棒。 本番は明日なのだ。 ここで気を抜けば失敗が生まれ、挽回しようと力み始める。 そこからはデフレスパイラルが発生し、文化祭が荒れることになるだろう。」
「そこまで大きくは・・・」
ならないこともないのかと考えを改める。 芦原の事を否定するわけではない。 文化祭とは言え主に実行しているのは生徒なのだ。 想定外の事は起きて当たり前なのだろう。
「変に肩に力を入れず、無理無く気持ちを切り替える事が大事なのだ。 剣道、いや、道術を学ぶものは必ず通る道だと我は思っている。」
「常に冷静な気持ちでってやつか。」
「大切なのは平常心だ。 いかなる場合でも冷静に対処すれば最悪の事態は免れる。」
最悪の事態・・・今の俺にとっては西垣またはエムゼが機嫌を損ねて暴走することだ。 今のところあの夢の片鱗は恐らく見えてない。 だが完全に無くなったとも言い切れない。 いずれにしろ気が休まる訳ではないのだ。
「とにかく今日がなにも無くて良かったとも言えるか。 とりあえずお疲れ。」
「ああ。 お疲れだ。」
そう言って芦原と軽く手をタッチする。 その様子を見ていたのか西垣や他のクラスメイトも同じ様にハイタッチが繰り広げられていた。
「ただいま。」
文化祭とは言え学校に残るのはご法度なので、家に帰ればそこには食卓で頭を抱えている姉さんの姿があった。
「どうしたのさ姉さん。 そんなに悩んで。」
「カズか。 生徒会の方で少々面倒なことを任せられてな。」
「頼られてるってことじゃん。 んで? そんなに内容が難しいものなの?」
「あぁ。 例の件が終わっていない今、他校の生徒に対しどのように節度を守って貰うか考えていてな。」
「・・・そんなこと姉さんに頼んでも無理じゃね?」
あの生徒会長がどこまで求めてるのかは知らないが、そんなことをするのならばお客を一人一人確認しなければならなくなる。 負担が増えるとか言うレベルじゃない、というかそんなことを今日の明日で出来るわけがない。
「無理の無い範囲では考えるが、事実私も無理難題だと思っている。 本当に最低限の案を提案するだけなのだが、いかんせんそれでいいのかと疑問の繰り返しでな。」
「深く考えるとドツボに嵌まるよ。 もう出来ないって割り切った方が早いって。」
「思い切りの悪さが私の短所だろうな。」
そこまで言ってはないが、姉らしいと言えばそうなる。 結局考えれるだけの案を出した姉さんは早めに寝ると言って部屋に戻り、俺も寝る時間まで色々としてから寝る事にして、文化祭1日目を終えた。




