リハーサル
テストも終わりしばらくして、文化祭も大分近付いてきた。
「生徒会も色々と大変そうだよなぁ。」
家内での姉さんの姿を思い出しながらそう呟く。 姉さんは生徒会の一員であるため文化祭の準備にてんやわんやしているようで、家に帰れば学校での凛々しさの欠片もなく気の抜けた姿を見せる。 それほどまでに張り詰めているのならば唯一の我の出しどころである家では休みたいものだ。
「おーい積和。」
声をかけられたので振り返れば、演劇部のメンバーの1人がこちらに向かってきていた。
「どうした?」
「いや、積和から聞かせて貰った楽曲でまた意見が欲しくてさ。」
演劇部の選曲に対して助言こそしなかったものの、自分が聞いてみて使ってみてはどうだろうか? という感覚で渡したので、実際にはどんな場面でどのように使われているのかは知らないのだ。
「意見って、俺は渡しただけだから良し悪しなんて分からないぞ。」
「いや、曲自体の問題じゃなくて、場面的にどうかって言う意見を聞きたくてさ。」
「・・・?」
「まあついてこいよ。 今リハーサル中なんだ。」
そう言われて俺はついていくことにした。 最近部活にまともに顔を出さなくなってきているので、弓道の練習が疎かになりつつあるのだが、臼石先輩曰く
「うちの部活はそれなりに自由ではあるからね。 常に来て貰うことも無いんだよ。 遊びと学びが学生の本分だろ?」
そんな言葉を言っていた。 その後に駆け付けた嶋崎先輩に小言を言われてたけど
そしてリハーサルを行っている部室へと入っていった。 部員でない俺のことを見て不思議がるのも訳無かった。
「場違いじゃね? 俺。」
「第三者の意見も取り入れるって先輩も言ってたから大丈夫だって。」
「それは今使う言葉じゃないだろ。」
しかし人が来たからと言って手を抜くわけではないらしいので、リハーサルは続けられる。
「それで俺はどうすればいいんだよ。」
「まあ見てろって。 この辺りでこれを流してみて・・・」
場面は互いに向かいあい、その後に激しい剣術の押収をしている様子だ。 そんなチャンバラで流されている音楽は、確かに雰囲気には合っている。 合っているが、何かが足りない気がする。
「どうだ? こんな風に流すんだけどさ。」
「悪くはないんだが・・・もう少し迫力のあるものにする方がいいんじゃないか? この曲とかさ。」
そう言って選んだ曲を先程のチャンバラのシーンに流してみる。 するとどうだろうか。 先程よりも一層緊迫感が生まれて、その空間だけ命の鬩ぎ合いになっていると錯覚する。
「おお! 流石積和だ。 さっきよりも良くなった。」
「お褒めにお預かりどうも。 それじゃ俺はここで失礼するぞ。」
「あれ? 行っちゃうのか?」
「これ以上見てたら楽しみがなくなっちまうからな。」
そう言って俺は演劇部の人達に挨拶をした後に部室を出るのだった。




