補習を避けろ
「なんであたいがまた勉強しなきゃいけないんだよ。」
「いいから文句を言うな。 今後の帆山の為でもあるんだからな。 ほら、そこの問題の解き方は・・・」
俺は今帆山の家にて帆山に勉強を教えている。 所々で黒服の人達も応援をしている。
状況からして大体察しはつくと思うが、とりあえずの経緯だけでも説明はしておこう。
―――――
「お兄さん。 少しよろしいですかな?」
帰り道いきなり複数人の男性に道を阻まれた。 周りには誰もいないことを確認するに、この機会を狙っていたかのように見える。 どうする? 警察を呼べるようにしないといけないか?
「お嬢の事で、助けて欲しいんでさぁ。」
「・・・ん? お嬢・・・ あ! 黒服の!」
道を阻んでいる人の1人がそう言ったので、目の前の人達がどんな人物かすぐに分かった。 そして黒服ではなく、私服っぽい感じなのも大体理由がついた。
「・・・流石に目立ったんですね。 黒服。」
「ボディーガードって言っても納得してくれやせんでした・・・」
ご足労なこって。
「それで助けて欲しいと言うのは?」
「・・・実はお嬢はお世辞にも頭がいいとは言えやせんでして。」
まあそれは分かってる。 口にはしないが。
「・・・ん? てことは落としたのか?」
「1科目だけですがね。 でもそれを次の再テストで落としたら補習が待ってるんで、文化祭を楽しめないと思うんでさぁ。 幸いにも再テストは来週らしいんで、それまでになんとか平均点を取れるところまで教えてあげられませんかね?」
事情は分かった。 確かに楽しめなくなるのは良くないよな。 俺の週末はまた騒がしくなるが、人助けと思えばそれも悪くはないだろう。
「分かりました。 その旨は伝えておいてください。」
「お嬢の事、よろしくお願いいたします。」
そう言って頭を下げる黒服(私服)の男性達。 こういう意味では確かに誰にも見られない方が良かったと安堵した。
―――――
そして現在に戻る。 ようやく一区切りついたと言うことで、帆山はそのまま机に突っ伏した。
「おいー。 何時終わるんだよこれぇ・・・」
「最低でも来週までだ。 俺も付きっきりじゃ教えられないから、あとは黒服の人達に教わりな。」
「そうは言うけどよぉ・・・んー・・・」
そう言って帆山は唸る。 話を聞く限りでは落とした科目である数学以外は、平均点よりは低いもののなんとか赤点は回避している。 つまり最低限の勉強は出来るのだ。 そうなればあとは本人のやる気次第みたいなところだろうか。
「お嬢。 これを乗り切れば褒美があると考えればいいんっすよ。」
「・・・例えば?」
「例えば・・・そうっすねぇ・・・文化祭であんちゃんと回れるとか。」
「え」
いきなりの飛び火に驚いたが当の帆山は
「・・・補習にならなかったら、それが出来るのか?」
どうやらやる気になっている様子なので、俺は仕方なく
「・・・ちゃんと赤点を回避できたらな。」
そう付け加えると
「分かった。 それならやる。 だけど約束を破るような事はするなよ。」
そう言ってまたノートとにらめっこする帆山。
「また出汁に使うようなことをしてすいやせんでした。」
「俺外堀埋められてないよな?」
そんな謎の不安感を覚えながらも、今は帆山の補習を避けるために、精一杯勉強を教える事にした。




