ちょっとした会話を
お昼前に同じ話が出来る奴がいるとは思わなかったが、それ以外はなんでもない普通の学校生活を過ごしていた。
本当に平和な1日だった。 いや、急に変貌されても堪ったものではないが、やはり何事もなく終わってくれる方が安心感はある。
校舎から聞こえる部活中の掛け声を聞きながら歩いていると、ふと窓から校庭を見ている西垣の姿があった。
その1つの風景だけでも西垣はとても絵になっていた。 もし自分が美術部のような人間なら、何かしらにスケッチしていたのかもしれないが、残念ながら俺には美術関係は得意じゃない。
そんな西垣の姿を見ていると、向こうも目線に気が付いたのか、こちらの方を見た。
「あ、積和君。」
そう言ってこちらに歩み寄ってくる。 こっちから行っても良かった気がするが、そこは気にしない。
「西垣さんは部活に興味あるの?」
「はい。 陸上で走るのも楽しいと思いますし、テニスも右往左往しながらボールを追いかけるのも、新鮮に感じます。」
心なしか目を輝かせているように見える西垣に、運動は苦手かもと思っていたので、やっぱり見た目で判断しては駄目だと感じた。
「その、積和君は、部活に入るのですか?」
おっと、ここでそんな質問をしてくるか。 個人的にはどうしようか迷ってたりしてるんだよなぁ。 部活に入るのが強制ではないにしろ入るか入らないかに関しては迷っていた。
「まだ特には決めてないかな。 それにやるにしたって、どんな部活があるかまだ分からないし。」
「運動部には入らない、と言うことでしょうか?」
「こう見えてもインドア派だからねぇ。 運動は出来ない訳じゃないけど、最低限って感じ?」
そう言って肩を竦める俺。 先に言った通り身体を動かすのが苦手なのではなく、そのスポーツに打ち込める程の情熱が感じられないと言った方が正しいのかもしれない。 素人が手を出しても言い領域ではないとも思うし。
「む。 そこにいるのは我が相棒、積和 数馬ではないか。」
西垣と会話をしていると、廊下から俺を呼ぶ声がした。 まあ今の喋り方で誰かは分かっているが、いつの間に相棒になってるんだよ。
「こんにちは。 ええっと、芦原君、だったよね。」
そんな芦原の独特な喋りに臆せず西垣は話しかける。 普通の女子ならドン引きされているだろう。
「如何にも! 我が名は芦原 近衛! アフロディーテのような貴女にも名を刻めたことを誇りに思おう!」
「アフロディーテって確か、北方神話の女神の名前、だよね?」
「西垣。 芦原の言い方のことはあまり深く考えない方がいいぞ。 それっぽく理解していれば普通に喋ってるだけだから。」
西垣がこれ以上困惑する前に俺が芦原の扱いについて釘を刺しておく。 意味が分からないからと気分を悪くされては内心困るのでな。
しかしこれは好機とも取れた。 あの夢の中では西垣の味方をしてくれるものがいなかったと推測するならば、ここで西垣と会話してもらって、芦原との友好関係を築いてもらおうと考えたのだ。
「なあ芦原。 良かったら放課後どこかに寄り道していかないか?」
芦原氏、本領発揮